似ている、近い、というだけで数学の先生や数学者が検証抜きに「オウムガイには1:1.618の黄金比がある」といっている。どこの比が黄金比なのか、という点も諸説それぞれ勝手な思いつきである。「自然という王様は黄金の服を着ていてほしい」という願望の投影としか思えない。
ちゃんと調べれば違うとわかるのに、という。理系文系、問わないよね、こういうの。私も実験やってて、これまでに何度、関係ないものを関係あると誤認識してきたか……。中間報告までは威勢がいいんだけど、最終報告ではお手上げ状態になってる、という。パッパラパー。
偉い先生も安直に俗説へ乗っかってしまう。データから俗説に異を唱えるこの記事の方が、私はずっと説得力があると思うけど、世間の常識は微動だにしない。なんでだろ。
日経ビジネスオンラインの竹中正治さんの記事には、思い込みの妥当性を調べてみる、というテーマで書かれたものが多く、面白いです。
世界の「解釈」と「事実」。おかしな解釈に、じつは合理性がある、それはわかる。でも事実に反する主張は、どこまでいっても事実に反している。オウムガイの件で、事実を知ってなお議論したがる人はいない。なのに誤解は拡散していく。バカには見えない服という物語に乗った王様を笑える人はいない。(2007-10-26)