韓国の様子を見ると、実名制になっても、誹謗中傷は大して減らないみたいだね。「被害者」が「加害者」と突き止めやすくなった、としても、実際に罰を与えるところまでいく事例が増えないことには、なかなか……。韓国政府の調査については、今後もレポートを続けてほしい。
ともかく現状は、言論の萎縮も、中傷の抑制も、ともに限定的という感じ。まあ実名制といっても、常に名前が出ているというわけじゃないようだし……。考えてみれば、知人・友人間では、実名をお互いに出している場で、ひどいことを言い合ってたりする。そうそう劇的な変化はありえなかったのかも。
先日、出張先で久々にタクシーに乗った。運転手が道に迷って、私の行き先の会社に電話。受付嬢が応対したのだけれど、どうも要領を得ないようで、イライラしてる感じ。切った後で「やっぱり女はダメですね、ホント」とかいって、同意を求めてくるので困った。
私が例えば、タクシー会社に「おたくの会社は社員教育がなってませんな」みたいな一報を入れるかも、という危機感がないんだな。運転手席の後ろに名刺入れがあって、運転手と会社の連絡先が書かれたカードが入ってる。ご自由にお取り下さい、とやってるわけ。それなのに。
ニコニコ動画に先日、NGコメント機能が実装された。将来的には、一定以上の人数(捨てアカ問題を無視できないなら有料ユーザー限定でもよい)がNG指定している発言者のコメントはデフォルト非表示、多くの動画でデフォルト非表示となったユーザーはコメント不能となる、というのも「あり」かもしれない。
言論の自由は、あらゆる場面で最大限に保障される必要はなく、民間サービスは個々の事情に応じて言論を制限してよい、と。現にアダルトコンテンツの公開を禁じているウェブサービスは数多い。
名誉毀損で有罪だとかどうとかいう話と、誹謗中傷が野放しになっているみたいな状況との中間に、「そういう言論は、弊社のウェブサービス上では認められません」という領域が広がるといい。声の大きい先進ユーザーには嫌われそうだけど、最終的な獲得ユーザー数など商売としては勝利し得るのではないか。
「可能性」に事寄せて、中間領域自体を認めないという主張、私は賛同しない。
削除請求に法的拘束力はないし、仮にブログサービス事業者から追い出されたって、発言自体が禁じられたわけではない。今回だってサービス事業者は削除要請を蹴っている。そういう自由がある。楽天だって、明らかに違法でなければ何でもあり、ではないだろう。個別に判断するはず。こういう領域は必要なんだ。
著作権侵害の非親告罪化だって、違法行為と適法行為、いずれの萎縮効果が大きいのか、という判断をすべきだと思う。現時点では「判断の材料がない」というのが実際のところ。だからやらない、だからやってみる、どちらの道もありえる。