趣味Web 小説 2008-02-13

池田VS天羽 どちらにも共感するところあり

天羽優子さんが池田信夫さんをウェブで批判。池田さんが抗議のメールを出したら、天羽さんがそれを公開。批判は取り下げず。業を煮やした池田さんは、天羽さんの使ってるサーバーの総責任者である山形大学の学長さんに抗議した……という話題が、ちょい前にあった。

私はどちらにも共感するところがある。

まず池田信夫さん擁護風に書くと、天羽さんは頑固なので、よほど確実な何かがないと、発言を引っ込めないだろうし、公開したメールを非公開にもしないだろう。

私は過去、いろいろ要請に応じて(明らかにこちらに全く法的な問題がないケースでも)記事の一部または全部を非公開にしてきた。やめてほしいという人の気持ちを踏みにじってまで公開する意義がない、と判断したからだ。天羽さんは、私とは拠って立つ価値観が異なり、公開の意義を重く見るだろう。

だいたいそういうことは、最初のリアクションの段階で、おおよそ分かる。分かるので、話の通じる相手と交渉しよう、と考えることに疑問はない。こんなとき、サーバー管理者に連絡するのは定石といっていい。たまたま今回は、サーバー管理の最終的な責任者が天羽さんの上司でもあったわけだけど。

池田さんは議論から逃げている、みたいな意見もあるが、他人事だからそういうんだ。経験上、削除してもらいたい記事のことで議論なんかしてトクをしたことはひとつもない。所詮、前提とする価値観が違えば、説得なんかできない。ややもすると「3回まわってワンといえ」と同等の屈辱的な対価を要求される。

私もかつては高飛車に応対していたものだが、自分が削除してほしいとお願いする側になって、愕然とした。何に傷つくかなんて、人それぞれだろう。しかし、明らかに違法なコンテンツでもなければ、相手がイヤだといえば、絶対に消えないといっていい。

……とはいうものの、今回、話題になっている件についていうと、池田さんの過剰反応じゃないか、という感想。しかもあの書き方! 石にかじりついてでも消してやらないぞ、と燃えたぎってしまう人がいてもおかしくはない(天羽さんは冷めた感じだが)。

まあ私なら「面倒くさいから」消しますけど、それは別に失うものがないから。天羽さんは逆にこうした場面で消さない自分が好きなので、こんなことで屈するのはむしろ精神的に高コスト。一方、池田さんの言動には暇潰し感が漂う。真剣じゃないなら、人の生活に影響するようなことまでしないでほしい。

まとめると、池田さんの行動は、大筋で理解できる。でもネット大道芸のつもりでやってるなら、勘弁してほしい。天羽さんの反応もわかるけど、自分が同じ立場だったら、素直に当該記事を消すことにしたい。池田擁護の記事が少ないので、親池田の部分を詳しく書きました。以上。

柳美里さんの怒りは分からないでもない。でも長塚圭史さんが編集部に相談するのは自由だと思う。柳さんとは交渉できない、と思う人は少なくないのではないか。だって瞬間湯沸かし器だもの。しかも意外なところにスイッチがあって、いくら気をつけても事故を防げない。

天羽さんは上長に抗議が行って(小さいとはいえ)生活リスクとなったことを実名公開のデメリットといっているけれども、それは違うと思う。経験上、日本の言論の自由はかなり強力。抗議する側は相当なハンデ戦を強いられる。だから長塚さんが柳さん本人ではなく編集部に相談できたのは、いいことだと思うのだ。

だいたい書いた本人を説得するのは難しいだろう。もう少し低いハードルがあって、初めて対等といえるのではないか。まあこのあたり、自分が削除を求める側に回るとは思っていない人とは意見の合わない部分だとは思う。

長塚さんはその後、「en-taxi」で特集を組まれた。なるほど。そして、柳さんは同誌の編集から外れた。やっぱり、我慢ならなかったらしい。短気は損気だが、柳さんはその人柄で私小説風の作品を売っている。これも仕方がない。

Information

注意書き