長らく、民主党の金融政策が、よくわからなかった。しかし日銀執行部人事に関する国会審議の様子を見て、私の読んだ幾冊かの初級の経済学教本とは異なる見解が民主党内で有力であるらしいことはわかった。
で、将来のインフレ懸念を理由に利上げを目指していく(と解釈される)所信を表明した白川副総裁候補(元日銀理事)のみ同意。所信は白川さんと同様の武藤総裁候補(元財務省事務次官)は財政に配慮して低金利を継続すると予想して不同意。インフレ目標政策でデフレ脱却を目指す伊藤副総裁候補(学者)は不同意。
民主党の金融政策は、その方向性が明らかになったといっていいと思う。金利を上げ、国債の買い切りオペをやめる、即ち金融引き締めを行いデフレを継続するわけだ。格差解消と庶民の生活向上を目指して、そういうことをするんだ、と。
あと社民党や共産党の主張では、低金利は大企業優遇政策なのだそうで、やっぱり利上げ志向。そうすることで弱者が救われる社会になるらしい。多分、それが支持者の思いなんだろう。
バブル崩壊後、日銀の too little too late の政策対応のため卸売物価はずるずるとデフレ基調に陥り、ゼロ金利でも実質金利が大きなプラスとなった。その先の手である国債の大量買いオペは財政規律への影響を懸念する声に勝てず封印。超低金利と経済停滞が長く同時進行した。
もっと素朴なレベルで誤解されているケースもあって。景気が過熱すると金利が上がる。すると前年業績を背景とする賃上げ+インフレ抑制で生活向上実感が生じる。庶民目線では、利上げ→生活向上、となる。逆に景気悪化時も、数回の利下げが行われた頃に、解雇風が吹き荒れる。で、金利と景気の関係を逆認識。
バカだなー、といいたいのではなくて、いま私はたくさんの本を読んでアタマで納得したから、反論できるのだけれど、経験の積み重ねから帰納的に考えたら、同じように間違いかねないな、と。怖い。しかも私は、とうとうその人を説得できなかった。ますます怖い。(ていうか、今の私も大いに勘違いしている可能性はある)
そこまでいうなら利上げすればいい。マイナス成長でみんな路頭に迷えばいい。でもきっと、政治家が悪い、経営者が悪い、利上げは悪くない、なんだろう。他人任せにせざるを得ない問題に関する自分の判断は、いつだって無謬なのだ。
新銀行東京が教科書通りに大赤字を出しても、「既存銀行の審査がバカだから、金融危機以降、本当は優良な中小企業が融資を受けられずに潰れていっている、何とかしなければならない」と主張した石原都知事は反省しない。「貸し渋り」に怒っていた人が、誰も反省していないのと同じことだ。
基準を安全側に振って審査すれば、優良企業が審査で落とされることを避けられない。もちろんそれは銀行にとって損失だから、銀行は切磋琢磨して審査の目を磨いている。自由競争の結果、審査能力に劣る銀行は淘汰されているはずだから、現状は不完全ながらも現時点で実現しうる最高水準であろう。
したがって既存銀行の審査に通らない優良企業を選別できるとの前提で新銀行を設立するなど、馬鹿げている……結果的に、懸念は現実のものとなったのに、「銀行は怠けている」という批判は相変らずだ。