趣味Web 小説 2008-10-23

ポメラの行方

ポメラに関する意見をいろいろ読んだが、やっぱり大勢にウケようとすると、機能を増やしていくしかないんだろうな、と。

microSDカードに対応したら「なんでmicroSDHCに対応しないんだ」とくる。基本、microSDのように小さなメモリーカードは抜き挿しに向かない。パソコンとのファイルのやり取りはUSB経由が妥当。microSDは本体内蔵メモリから溢れたファイルを仮に格納するための外部媒体でしかなく、2GB対応で十分すぎるだろう。

いま携帯電話で大量の写真の保存やワンセグ録画などのためmicroSDHCカードを使っている人は、携帯電話で受信したメールをカードにコピーしてポメラに挿したりできないのが不満なんだろうが……。

ちなみにパソコンでSDカードを使っている人は、microSDカード対応じゃ不便だ、SDカードに対応しろ、という。無茶をいうなよ、体積が全然違うじゃないか。

あるいは、ファイル毎の文字数制限、8000字。メーカーは技術的制約によるものではないと説明しているそうだが、それは「不可能ではない」という話だろう。ユーザーの勝手に任せて巨大ファイルを開くと固まるマシンにするか、メーカーが快適な操作を保証できる文字数で制限をつけるか、という設計思想の問題だ。

microSDカードを挿しておけば保存できるテキストの総量は、事実上、無制限といえる。8000字の制約が問題になるとすれば、パソコンで作成した長大な文書の再編集だろう。しかしポメラって、そういう用途を狙った道具なのだろうか。絶対に違うと思うんだよね。

大学ノートが1冊60ページ(30枚)で終ってしまうことに誰が不満を持っているだろうか。手帳なんか、あの小さな版型でもっと枚数が少なかったりするものもある。ポメラは、そういうノートやメモ帳を置き換える道具なのだ。

喫茶店やファミレスで原稿を書いてる小説家は珍しくないらしい。そういう作家さんたちが、何百枚もの原稿用紙を持ち込んでいることは、まずないだろう。だいたい作家さんの日記を読むと、1日に原稿用紙10枚とか、20枚とかいうペースで仕事をされている様子。ポメラで十分なんじゃないのか。

ファイルがひとつにまとまっている利便性というものがあることは理解するが、学生の論文にしたって、章毎に別ファイルで何の問題があるだろう。昔のパソコンは処理能力が貧弱だったので、私は1章を1ファイルにしていた。確認してみると、どの章も原稿用紙20枚に満たない。ふつうそんなものだろう。

赤外線通信機能がほしい。はい、そうですか。すると次は Bluetooth にも対応しろ。さらに無線LAN対応じゃなきゃダメだ。ブラウザをつけろ。電子辞書をセットにしろ。かな漢字変換にSKKを使えるようにしろ。emacsが使えないか。viはどうか。

万人の様々な使い方にみんな応えようとしたら、機能を増やすしかない。

各端末ごとに注力する部分を絞ったNTTドコモの705iシリーズは思うように売れず、「全部入り」の905iシリーズばかりよく売れた。その反省をもとに706iシリーズでは大半の機種がワンセグ機能を搭載した。ワンセグなんて興味のない人の方が多いのだが、「ないと売れない」のだから仕方ない。

おさいふケータイやGPSも同様。通話、メール、カメラまではどうにか普及したが、他は過半の人にとって「なくてもいい」機能ばっかりだ。それでも、機能が欠けていると売りにくい。

追記:ポメラは初回出荷の1万台を完売したという。しかし100万台売れる道具にはなるまい。

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