趣味Web 小説 2009-08-25

子どもの悪事が明らかになったときの対処

0.

子どもが悪事を働くと、親はショックを受ける。窃盗は大きな犯罪ながら、少なからぬ子どもが一度は手を染め、親を泣かせます。リンク先記事にインスパイアされて、私の雑感を簡単にまとめてみました。エラソーな文体に反して、内容に自信はないです。テキトーに読み流してください。

1.

私は親不孝者なので、自分の悪事で親を泣かせたことが何度かある。その体験からいうと、子どもが悪いことをするのは、基本的に親のせいではない。親が立派な人物で、多くの人から賞賛されるような子育てをしていても、子は悪事をなす可能性がある。そういうものだと思う。

私が***を盗んだのは、とある事情から、決してありえないと思われていた状況下だった。両親の絶望はいかばかりだったか。しかしとある事情の件もそうだが、両親は子どもの重大な過ちについては、その後、決して蒸し返さなかった。子どもの生意気な発言に怒っても、過去を持ち出して優位に立とうとはしなかった。

私のために、両親がどれほど超人的な努力をしてきたか。絶対の信頼を裏切った私を、父も母も再び信じてくれた。親業は、人間に可能な範囲を超えている、と思うことがある。

2.

子どもが悪いことをすると、理由の追求に没頭する人がたくさんいる。でも、悪を為すのに理由なんてあるのか。たしかに一応はあるのだろうが、それを知っても予防できる悪事なんて限られていると思う。未来の破滅を予測しながら、私は***を盗んだ。そこには何の合理性もなかった。

反省の言葉を重視する立場にも与しない。悪事の誘惑を跳ね返す情動の核心部分(=恐怖や悲しみのようなもの)を言葉にするのは無理、と感じている。学校の反省文が、私は***にたいへんなご迷惑をかけ云々という外形的な内容となっているのは、先人の知恵だろう。

また、お説教の意義も疑っている。体験的には、叱られて意気消沈しているときには、頭が半ば痺れている。そんなときに話をされても頭に残らない。またお説教する側も相当に感情的になっているから、話に無理・無茶が混入しやすい。それでいて聞き手は反論を許されない。理不尽だ。

まとめると、人の悪事が露見した際に、性急に何かを教え諭して反省の言葉を引き出す対応に、私は疑問を感じている。親の危機対応は、子どもが観念して罪を引き受ける状況を用意すること。その作業は同時に冤罪も防ぐはずだ(後述)。道徳感覚は、日常会話を通じ丹念に養成するもの。お説教は安直。

あるいは。ぶっちゃけた話、みんながあまり悪いことをしないのは、損得勘定ゆえなのかも。問題が生じるたび厳罰化が支持を集める世論を見ていて、そう思う。子どもが何度も「悪に手を染め、バレて罰せられる」パターンを繰り返すのは、いざバレたらこんなにひどいぜ、という体験学習なのかもしれないね。

ともかく、子どもが盗みを自制できれば御の字。それ以上は人の手に余る話だと思う。

3.

子どもを問い詰めれば、必ずウソをつく。悪の自覚がある、あるいは問い詰められたことで悪の自覚を持つからだ。人間は、そういう風にできている。この暗黒面から子どもを救い出す方法は、ひとつしかない。言い逃れのできない証拠を、あらかじめ調査・発見しておくことだ。これは無実の罪で子を責める失敗を避けるためにも必要なステップ。

私が***を盗んだ際、確実な証拠をひとつ掴んだ段階で父は休暇を取った。そして私が学校へ行っている間に、本棚の裏から学習机の下まで、徹底的に調べた。弟が家にいない時間帯を見計らって居間に呼ばれるまで、私は自分の悪事が露呈していたことに全く気付かなかった。両親は***の保管場所をリストにして、発見後も場所を移動しなかったのだ。

このとき***の件とは別の秘密を両親はいろいろ知ったはずだが、「関係ないことは全て忘れたから安心しなさい」という。どんな魔法を使ったのかわからないが、実際この件に関して、両親の演技が破綻したことは一度もない。余談はこれくらいにして、居間へ呼ばれた場面に戻る。

「隆夫、学習机の上から3番目の引き出しの青い書類袋の中に***を持っているね。そしてそれは***から盗んだものだ。同じく***、***、***もそうだね。それから4番目の引き出しの茶色の書類袋の下にある***と***も。これで全部だと思っているのだが、どうだい、間違い、不足があるかな」

私は顔面蒼白になった。そして観念して、「間違い……ありません」と小さくうめいて、うつむいた。

「そうか」

長い沈黙。不意に涙があふれて、止まらなくなった。完全な故意犯で、いつかこうなると予想していたはずなのに。全然、わかっちゃいなかった。心底から反省するのは、いつだって取り返しがつかなくなってからなんだ。どうして自分は、こうも愚かなのだろう?

「……ごめんなさい」

「明日、一緒に***へお詫びに行こう」

それまでずっと黙っていた母は、私をしっかりと抱きしめ、「明日、きちんと***に謝ったら、今日の気持ちを忘れずに、胸を張って新しい人生をはじめなさい」といった。両親は、それ以上、何もいわなかった。

それから、弟が帰ってきて、いつもと変わらない夕食の時間になった。

追記

こういうのって、相手が大人でも同じだと思うな。お説教の無意味さも含めて。ただ、これって沸点の低い人はダメなんだよね。自分で考えずにすぐに当人を問い詰めちゃって、理解不能の回答に怒って説教、みたいなパターンにはまりがち。それなら何もしないほうがマシだ、っていう。

あと【3.】について、子どものプライバシーを気にする意見があるんだけど、ひとつ確実な証拠を見つけた後なので、警察なら確実に捜査令状を取れる状況。ことの軽重を取り違えてはいけない。ただ、これはあくまで盗品の調査、事件と無関係の秘密を知っても全て忘れる、それが両親の方針だった。

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