この理屈だと、逆に消費税には累進性があることになってしまうのでは?「貯蓄する=より消費税率の高い未来に消費する」なので。貯蓄とは消費の先延ばしなのだから。消費せずに死んだら、相続した子供が消費する。
貯蓄の実質の運用利率が消費税の増税ペースより高ければ、貯蓄が累進性を高めることにはならない。
銀行預金の利率は非常に低いから、今後は消費税増税のペースを下回るかもしれない(過去の実績は預金利率が勝っている)。けれども、株式や債券への投資も行うとすると、消費税の増税ペースが高々年1%にとどまるなら、国債ではさすがにつらいけれど、保守的に運用しても利率が上回るのではなかろうか。
物価連動国債と物価に連動しない国債の利回りの差はブレーク・イーブン・インフレ率と呼ばれ、市場参加者の物価見通しを示すものとされる。物価が上昇すると予想されるなら、物価連動国債は人気が上がり、結局は物価上昇の予測値と同じだけ通常の国債より利回りが下がる。逆に物価が下がるなら、物価連動国債は人気が下がり、物価下落の予測値と同じだけ通常の国債より利回りが上がる。
ブレーク・イーブン・インフレ率の推移を見るに、麻生内閣は大規模な財政支出を行ったが、市場は相変わらずデフレを予想していることがわかる。実際、足元の物価上昇率はマイナスだし、GDPデフレーターも落ち込んだまま。
来年度の鳩山内閣の予算が90兆円規模になる見通しとなり、大量の赤字国債を発行するか、予算を減額するかで議論になっている。だが、これほど需要不足が明確なら、返済不要の国債ともいえる政府紙幣を大量に発行する条件が整っているといえるのではないか。
もし政府の借金が国民の将来不安の原因ならば、3%以下のインフレ率に収まる範囲内で、どんどん政府紙幣を刷って借金を減らせばいいんじゃなかろうか。デフレ経済では税収が落ちるが、逆にデフレだから可能な借金の圧縮方法もあるだろう。
高橋洋一さんの予測では2010年のGDPギャップは80兆円だという。これを全て政府紙幣で埋めるなら、税収が40兆円ほどあるので、予算が90兆円でも、むしろ国債の残高を減らすことができる。
日本の生命保険のもう一つの特徴は、保険金あたりの保険料が高いこと。10年定期の掛け捨てで3,000万円を保険する場合、日本では優良体でも5,175円。それに対し米国では喫煙者の標準体でも4,944円、非喫煙の優良体では1,291円しかしない。
この数字には補足説明が必要だと思う。実際に日本の保険会社が非効率で手数料が高いとしても、それだけでこんな金額の差にはならない。
簡単に書けば、運用利回りの差ということになると思う。保険会社は集めたお金を運用して増やし、そこから保険金を支払っている。物価上昇率がプラスで、きちんと経済成長を続けている利回りの高い国では、平均を取って5年後に3000万円を支払うために保険会社が徴収するべき保険料は、デフレで経済が停滞している国よりもずっと少なくて済む。
だったら保険会社が海外で資金を運用すればよさそうだけれど、長期的にはデフレ通貨はインフレ通貨より高くなるので、かなりの部分が為替で相殺されてしまうことに注意が必要だ。
ようするに、将来の3000万円を基準に議論しているのに、現在の日本円で掛け金を比較するのは疑問。例えば、旅行の傷害保険など、ごく短期の保険であれば、これほどの差は生じない。