趣味Web 小説 2009-11-11

私の空想するリフレ政策

この10年、議論は同じ。デフレは有害。インフレは起こせる。2~3%くらいのインフレ率がいい、という共通認識もある。問題は、緩やかなインフレを起こそうとして、いきなり制御困難な大インフレにならないかどうか。

1.

日銀が国債を買うと、市場に現金が増えます。商品は増えずにお金だけ増えるから、ふつうはインフレになります。そうならないのは、「供給が増える」場合と、「デフレが続きそうだから、もっと商品の価格が下がるまで貯金しておこう、と貨幣が退蔵される」場合。日本では、後者の影響が大きいといわれます。

逆にいえば、「供給が減る」か「貨幣がよく使用されるようになる(=貨幣の流通速度が上がる)」と、インフレになります。ただし急激に供給力が毀損するケースは考えにくく(関東大震災のときも大インフレになるほどの供給力の減少は起きていない)、日本が平和国家である限り、まず問題はないはずです。

やはり心配されるのは、突如として通貨への信頼が失われ、人々が大量に溜め込んできた預貯金を一斉にモノと交換しようとするケースです。私は杞憂だと思っていますが、過去に例のない話ではありません。物価は全員共通なので、「通貨の退蔵」が一斉に反転する恐れがあります。

だから、「通貨供給の拡大だけでインフレを実現する」という政策にはあまり支持がない。そこで注目されるのが、人々が目先の消費を我慢して預貯金に励んでいる理由のひとつに、将来不安があること。

生産性の向上などによる将来不安の払拭策は、全国民に同じタイミングで等しく影響を与えるのではなく、人それぞれ時間差と濃淡のある影響を及ぼします。そこで、通貨の量をあまり大胆に増やすことなく、将来不安を減らすことで防衛的な預貯金シフトを緩めるのが安全、というのが主流派の考え方らしい。

2.

しかし私は、デフレの害は深刻なので、リスクを取ってでも通貨供給の急拡大による短期決戦でのデフレ脱却を望みます。もちろん大インフレは怖いけれども、日本には失業者と潜在的失業者が膨大に存在するため、インフレは生産力の急拡大によって抑制しうると思っています。

ちなみに、潜在的失業者の中核をなすのは60~70歳代の男女のうち、労働が可能な1500万人です。かつての日本では農業や自営業の従事者が多く、「死ぬまで働く」「男女を問わず働く」のが当たり前でした。今後、サラリーマンも定年を廃止して、死ぬまで働くのが当たり前という社会にすべきだと思う。

以下、全く空想的ではあるけれども、私の考えるリフレ政策について簡単に書きます。

  1. 日本政府は、政府紙幣「1兆円札」を1000枚印刷する。
  2. 物価の動向を注視しながら、政府は日銀が保有する国債を政府紙幣で償還していく
  3. 需要の増加は、就労人口の増大に伴う生産力の拡大によって相殺され、インフレ率は緩やかに変化。
  4. 増税なしで、みるみる国債残高が減っていく。
  5. 「国の借金が増え続ける→将来の増税不安+社会保障崩壊の恐怖→生活防衛」という流れが止まる。
  6. 「国の借金が減る→将来の不安が緩和される→貯金を取り崩して消費」という新しい流れができる。
  7. 政府紙幣による国債の償還を次第に縮小し、インフレ率を+3%程度で安定させる。

こうした非常手段で国債を償還すると、市場は「いよいよ財政破綻のときが来た」と受け止めるだろう、との批判があります。日本円と日本国債のパニック売りが生じ、制御不能の大インフレになる、と。

私は、現代の日本は労働者が大量に余っている国なので、生産力増大の余地が非常に大きく、それゆえ大インフレを抑制できる理路がある(1970年代の狂乱物価の時には失業者も潜在的失業者もほとんどいなかった)と考えています。雇用をスムーズに拡大できるかどうかが鍵。

3.

私の意見は上記の通り過激なのだけれど、藤沢さんと池田さんが批判している勝間さんの意見はもっと穏当で、政府が国債を発行してお金を使え、というもの。財政不安による消費の抑制は、「景気回復→自然増収→財政再建」という流れで自然に消えていく、という立場なんでしょうね。

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