趣味Web 小説 2009-11-14

事業仕分けと無理な注文

財務省が非公開の場で実質的に「事業仕分け」と同じことをしていたときには、大して話題にもならなかった。なのに、こうして公開の場でやると、やれ基準がどうの、素人の議論だのかんだの、と喧々諤々の議論になる。それは公開の「成果」なんだろう、とは思う。

財務省時代の片山さつきさんは2chの軍事板で評判が悪かった。素人が防衛予算を切り刻んでいる、という。どんな分野でも、ある程度お勉強をすると「お金さえあれば改善できる(かもしれない)状況」がたくさんあることに気付く。財政タカ派の国会議員も、閣僚になると、自分が代表する省庁の予算を増やそうとする。

でも、予算の総額には一定の限度があり、有用な施策であっても、無制限には認められない。必要なことにお金を使うなら国民は納得してくれるはず? 実際には、万人が認めるお金の使い道なんて存在しない。

それに、民間と同様に政府も予算の無駄遣いを完全には解消できない。「無駄」の割合は少しでも、総額が莫大だから、絶対額が衝撃的。福祉予算の不足は「無駄」とは桁が1つ2つ違うが、国民は「無駄」に怒って増税を認めない。だから「必要」な事業も整理を避けられない。

「国家戦略を示せ」という意見もよく見かけるが、男女共同参画にせよ科学技術の振興にせよ、それを進めるべきだという意見に反対する人はまずいない。問題は、個別具体的な施策の費用対効果なのだ。しかもそれは、客観的な計算に基づいて序列化すればみな納得する、という性質のものではない。

日本で農業を振興するのは馬鹿げた話だが、国民はそう思っていない。こういう種類の施策が山ほどあるので、客観的な費用便益計算により予算を見直すなんて、不可能なのだ。「国民の常識」という曖昧な基準に基づいて、予算の総額を求められる水準まで抑制していくしかない。

無茶をいっても仕方ないだろう、と思う。

はてブ的には、スパコン開発支援の見送りが一番、話題になっている。はてブ民の「常識」に反した予算削減だった、と。ふうん。もしこの件に関するはてブの感覚が全国民の感覚に近いなら、大臣折衝や国会論議で必ずこの件は再論され、結論がひっくり返るはずだ。

だいたい、予算を増やす方向の議論は通りやすい

補足

私は以前、このウェブサイトを好意的に紹介した。しかし、こんなの税金の無駄使いだ、という意見も、理解できる。99%の国民は、このウェブサイトを見ないに違いない。だから、廃止したって不都合はないだろう。同じ金額を使うなら、マスコミへの情報提供を強化する方が、よほどいいかもしれない。

が、それはそれとして、このウェブサイトが有用であることは疑いがない。税金を使って行われている事業の少なからずが、このような種類のものだ。政府広報オンラインを見たおかげで、正しいインフルエンザ対策を実行でき、命が助かる人がいるかもしれない。それでも、これは税金の無駄使いかもしれない。

だから、事業仕分けは難しい。

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