キヤノンマーケティングジャパン株式会社が2011年4月入社の新卒採用活動を一時休止し、今期の業績を見極めたうえで4月以降に採用方針を提示することを広報したところ、とりあえずはてブでは話題になりました。キヤノン株式会社とは比較にならないものの、単独で5,700人超の従業員を抱える堂々たる大企業だけに、インパクトがあったのでしょうね。
世間の興味は優秀な学生の行方に焦点を当てているようですが、私の勤務先のような会社の場合、以前から大学4年の夏以降が採用本番でした。その理由は、大学3年生を採用しても、優秀な学生ほど逃げてしまうのですよ。だから、人気企業の採用活動が終るのを待たねばならなかったのです。
ネットでも新聞報道でも、何十社も受けて落ちまくって……という人がよく出てきます。説明会への参加や、履歴書の送付を「受けた」内に入れるならともかく、10社以上のペーパー試験や面接に臨む人は意外と少ない。田中秀臣『偏差値40から良い会社に入る方法』は、悩むことに時間を費やして、やるべきことをあまりやらない学生の実態を見つめた好著。当人の実感ほどには、就活は学生の時間を(少なくとも)物理的に奪ってはいない。
ともかく、青田買いが成立するのは人気企業だけで、まあ大半の学生は、そんな企業を志望しても時間の無駄。直感的にそのあたりを理解すればこそ、就活のエンジンはなかなか全開にならない。主観的には、大学3年の秋からずっと就活が精神的重圧になって「ものすごく苦労した」のでしょうが、「実際にどこかの面接を受けたのはいつ?」という質問に、2月と答えるのは早い方。4月あたりが多数派でした。(2002年3月卒)
就職活動の間延びは、学生があまり高望みをしなければ、それなりに合理的ではないかと思う。私の場合、7月に入ってから面接に落ちなくなりました。偶然かもしれませんが、そのあたりで「まだ/ちょうどその時期に採用活動をしている企業」が求める水準と私の能力が交差した、という要素も少しはありそう。
新卒偏重に反対する人が、新卒偏重の企業に入りたがるのは、個人的にはもやもやします。個人で組織の文化を変えるのは、きわめて難しい。新卒を偏重する企業には、必ずそれを支える企業文化が背景にあります。自分の気に入らないことをやっている企業に入っても、明るい未来は描けないんじゃないか。
新卒偏重を「嫌だな」と思う人は、最初から中途採用メインの会社を志望した方がいいのではないか。青田買い云々だってそうですよ。大学3年生を就活に駆り立てるような企業は許せない、という人が、どうしてそういう企業に入りたがるのか。
就職希望者からそっぽを向かれるなら、企業だって学生の青田買いなんかしようとはしないよ。