趣味Web 小説 2010-02-23

日本で「成長戦略」の議論がはやる理由

日本人からしてみれば、日本より組合が強く労働時間も少なく休暇も多い欧州のような国々の方がよほど改革の余地があるんじゃないか?って素朴に思う。なのにかの地でそうした供給側の改革を喧伝するような気配があまり見られないんだけど、どうしてだろう。長期的成長のための割り当てとしてそうした改革が必要なことはおそらく理解してるだろう。しかし、金融危機後優先されてるのは明らかに需要側の政策だよね。

この話の前提として、日本では景気回復のために「将来の生産性を上げる」供給側の方策が主に議論され、目下の需要不足による失業増やデフレの進行による経済停滞に対して、素直に需要を増やそうとする方策に世論が冷淡だ、という状況認識があります(注:私の理解です/以降、繰り返しません)。

日本経済のマネーは増え続けていますが、その回転がゆっくりになる方が勝っているため、需要が縮小して供給が余り、物価が下がるデフレになっています。だったらもっとマネーを増やす速度を上げたらどうか、というのがひとつの考え方。もうひとつは、人々がお金を貯め込んで使わない理由を解消したらいいんじゃないか、という考え方です。

後者に与する人々は、企業の設備投資や家計の消費が弱気な理由を、「将来、生産力は頭打ちになる。しかし財政再建+少子高齢化への対応で、多大な出費が予想される。よって貯金に励もう」という考え方が蔓延しているため、と考えています。

将来不安こそが問題の根幹。しかし少子高齢化は、今からあらゆる政策を実施し、それが成功しても、人口ピラミッドが正常化するのは100年後の話。財政再建は景気回復なしに実現不可能。とすると、唯一「将来の生産力増大」を確信させる政策こそが、設備投資と消費を促進し、日本経済を需要不足から解放、復活させる役に立つものだ、というわけ。

ではどうして、このような議論が日本でだけ盛り上がっているのか? というのが、すなふきんさんの疑問です。

私の回答は、欧州も東アジアも北米も「将来の生産力増大」を疑う世論がない、いま需要が不足気味だとしても、それはあくまで短期的な要因なので、短期的な視点でなされる需要補給策でよいのである、そういうことなんじゃないですか。

すなふきんさんの記述に寄せて書くと、つまりこういうことです。欧州人はいま、のんびりしている。ということは逆に、将来の成長余地は十分にある。よって将来不安はない。そもそも財政赤字が日本ほど累積していないし、日本より少子高齢化の進展は緩やか。将来不安が原因で投資や消費が冷え込むとは考えにくい。東アジアや北米も、そのあたりは同様です。

逆に日本はというと、「死ぬほど働いているのにこんな給料? 絶望した!」という感じ。欧州よりよっぽどあくせく働いているつもりだからこそ、自分たちが将来、もっと多くを生産できるようになるとは、とても考えられない。それでいて財政と年金の破綻は目前に迫っている(と国民が考えている)。これで投資や消費が活発になるわけがない。厳しい時代を生き抜くため、お金を貯めておきたい、と考えるのは道理です。

で?

私自身は「まずマネー供給を増やすべき」派です。というか、長期的な生産力向上のための施策の必要性は否定しない。大いに進めればいい。けれども、そちらは金融政策以上に様々な意見が飛び交っている状況。政策を具体化するだけでも年単位の時間がかかりそう。

デフレの害、とくに失業は放置できない。優先順位としては、より短期的に効きそうな政策を、やれるところまでやるべき。私は、通貨発行益による国債の償還がよいと思う。「企業の設備投資や家計の消費が増進してデフレが解消されるまで」満期がきた国債を黙々と償還していく。必要な法改正は、やるべき。

日本にとって明白な解決手段は、単に巨額の債務をマネタイズすることだ。これは一石二鳥どころではなく、一石で雁の群れ全部を殺すようなものだ。考えてみると、紙幣の印刷には以下の効果がある。

  1. 期待インフレ率を高め、実質金利を下げる。
  2. 円を弱める。
  3. ドル建て資産を保有し、負債が円建ての金融機関のバランスシートを改善する。
  4. 日本の純輸出を改善する。
  5. 日本が将来返済すべき債務の額を減らす。

将来不安を縮小しつつマネー供給を拡大する、一挙両得の方法だと思う。けれども、これはあくまで金融政策として実施するのがポイントながら、「デフレを脱した後に通貨発行益が財源化して大変なインフレに至るのでは?」という懸念の声が強くて実現は難しいらしい。

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