趣味Web 小説 2010-04-08

郵政改革、望ましいユニバーサルサービス維持の方法

昨日の記事とほぼ同内容だが、「それでも民営化はした方がいい」という意見を書く。あと妄想アイデアを少し。

1.

今の政府が考えているように政府出資を残せば、業務の制約が残らざるをえず、収益はおのずと限界が出てしまう。こうなると結局、郵政職員20万人以上を食わすためには、民営化しないときと比較して最大年間1兆円の国民負担(逸失利益)が避けられなくなる。

この見解を素直に肯定できないのは、日本郵政には「ユニバーサルサービスの維持」という制約があることだ。職員数を20万人と書いている以上、法律の本文でユニバーサルサービスの維持を義務付けられていないゆうちょ銀行単独の生き残り策を考えているわけではないだろう。

つまり、国民が主に地方でのサービス低下を許容しない限りは、日本郵政には何らかの支援が必要だ。そうしなければ、ほぼ確実に同業他社との競争に敗れる。非正規雇用を含めて約43万7000人もの職員が必要なのはなぜか、ということだ。

単純には、官営でも民営でもユニバーサルサービスの維持に必要な追加コストは同じだ。基本的には利用者負担でほとんどのコストを賄うことができる。足りないのは少しだけだ。

「法人税・固定資産税・消費税等の免除+特定分野の市場独占を許容する」という従来方式は、一見「税金の投入」を必要としないので、国民が許容しやすいものだった。しかし実際は、独占によるサービス価格の高止まりは国民負担そのものだし、免税と税金による補助金の支給は形式的な違いに過ぎない(国民感情においては不思議と大きな差があるのだが)。

高橋洋一さんの仰る通り公的な支援が業務の制約が不可分ならば、ユニバーサルサービスの維持を捨てない限り、仕方のないことに思える。しかし……。

2.

先に「単純には」官営でも民営でも同じと書いたけれども、実際には違いがあると思う。官営では経営合理化のインセンティブが乏しい。ユニバーサルサービス維持の仕組みが「固定額の補助金」なら、民営化された日本郵政は、経営努力によって利益を増やすことができるし、そうしようとするはず。

ユニバーサルサービス負担金の金額見直しを3年毎にすれば、2年目以降は、合理化努力がうまくいけば、補助金の内のかなり部分が利益になるということもありえる。

この観点からは、固定電話のユニバーサルサービス制度をそのまま郵政に応用することには異論がある。NTTは上下一体方式で民営化されたため、固定回線について他社とまともな競争にはなりえない。だから半年毎に負担金額が改定され、NTTが頑張っても利益は出ない。ゆえに経営合理化のインセンティブを欠いている。

もし郵政のユニバーサルサービス負担金も半年毎の改定になるなら、動機付けの点で官営と民営に大差はない。公費が投入されながら利益を競うことには、医療や介護の前例がある。郵政の場合、郵便も貯金も保険も競合他社が存在する。頑張れば儲かる仕組みにして、競合各社に門戸を開く仕組みにならないか。

ネット銀行やネット保険でよければ、今でもほぼ全国どこでも利用できる。それでは足りないといわれるのは、ようするに店舗の問題だろう。とすると、郵政のユニバーサルサービスとは、端的には郵便局をいかに維持するか、という話になる。そうであれば、例えば市町村単位での参加もありなんじゃないかな。

地方の信金などが、補助金があれば利益が出ると思えば手を上げる。あるいは窓口管理専門の会社を新規に立ち上げて参加することも認めたらいい。複数の会社が手を上げた場合は、公開入札方式でほしい補助金の額を下げていく方式で決める、とか。

3.

グループ内取引の消費税を免税するといった「特権を与える」方法では、競合他社から文句が出るのは当たり前だ。そんなズルをするなら、民間と競合する事業からは手を引くべきだ、ということになる。しかし実際にそのようにしたら、暇な人員を全国に配置することになって、非効率だ。

クール宅急便はヤマト運輸が開発した商品であり、政府に優遇されている日本郵便株式会社が提供するのはおかしい、なんて議論がある。それはそうかもしれないが、郵便サービスには一定の人員が必要であり、官にしかできないサービスだけを提供していては人件費が重すぎて大赤字になる。

bewaadさんの案は官と民の役割分担が明確でわかりやすいのだけれども、経営の合理化を進めて国民の負担を最小限とするインセンティブ構造がどうなっているのか、疑問なしとしない。

ユニバーサルサービス維持のための補助金をどの業者でも受け取れる仕組みなら、政府が日本郵政を特別扱いする必要はない。政府は株式を完全に売却できる。免税措置も不要だ。固定電話の事例のように、電話利用者から負担金を徴収するなら、財源の手当ては不要だ(増税と実質的な差異はないが……)。

というわけで、上記のような形でユニバーサルサービスを維持するならば、郵政を官営から民営へ変更することで、財政の改善にも多少の貢献が見込めるだろう。

現在でも郵便局株式会社はかんぽ生命以外の保険会社の商品を代理販売していたりする。信書郵便の全国集荷+統一料金配達とサービス窓口の維持こそが課題で、それを担うのが日本郵政でなければならない理由はない、という発想の転換が現実に可能なら……夢物語かな。

余談:

リフレ派ブログを見ても細かい話が多くて、どうもスッキリしない。私はユニバーサルサービスの維持コストと、ゆうちょ銀行はリスクを取れない(し取るべきじゃない)ということ、この2点がポイントなのかな、と思って考えをまとめてみたのだけれども、同じような整理をしている記事を見かけないので、少し不安。

重大な問題を見落としているよ、といった指摘は大歓迎。郵政改革は、参院選の投票先を選ぶポイントにしようと思っているので、よく考えたい。

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