趣味Web 小説 2010-05-12

口蹄疫の報道は不十分なのか?

1.

4月下旬に宮崎県で口蹄疫が確認された。その後、新たな感染例が続々報告され、過去最大の家畜殺処分が決まるに至っている。政府の対策の遅れが指摘されるとともに、報道が不足しているという意見もネットの一部で話題を集めている。

2.

私が考える「必要な報道」は、されていると思う。

こうした情報を、私は全て新聞から得た。薬局の待合室でテレビ報道に接する機会があったが、まず「人には感染しない」ことを強調し、また「畜産物を食べても問題ない」ことを伝えてもいた。みんなが知るべきことは、きちんと伝えているな、と思った。

対策費が数百億円規模なら、全国民的な同意を必要とはしないだろう。「農家の生の声が報道されていない」といって怒る意見には、賛同し難い。当事者の声は、状況が落ち着いてから、静かに報道するべきだ。

現在進行中の事態に機動的に対処する必要がある場合、過去の教訓の上に組み立てられた行動指針を遵守するのがベストだ。現在の当事者に多くの不満があることはわかるが、その声は次の機会に活かすしかない。混乱した状況で適切に意見を吸い上げて冷静かつ客観的な判断を下すことはきわめて難しい。

3.

報道が足りないという人は、報道量がもっと多かったら、国民の後押しによって、こうした対策の遅れの要因となっている課題がサクサク解決されたはずだ……といいたいのだろうか。

私が思うに、口蹄疫は95%の国民にとって「よきに計らえ」で済ませたい問題であって、自分なりに勉強して意見を持ち、政府に物申したいと考えるようなテーマではない。宮崎産の畜産物、農産物の買い控えはすべきでないこと、旅行の自粛は必要ないことだけ確認できれば十分だろう。新聞では基本的な情報については既に1回は特集を組んで報道しているのであり、その後は淡々と数字の報道を続ければいいのではないか。

国会では野党がきちんと与党の尻を叩き続けている。自民党は総裁自ら口蹄疫対策本部長を務めているそうだ。誰からも忘れ去られた危機ではない。

政府の対策にどのような問題があったのかということは、口蹄疫がおさまった後で、専門家の調査を待って、NHKスペシャルのような番組で取り上げてくれたらいいと思う。そのときに、野党は4月の段階から云々みたいな話も出るなら、口蹄疫に関心のある人には十分、伝わるものは伝わるだろう。

ちなみに、遅きに失したという意見はもちろんあると思うが、政府は10日、患畜の埋設処分場として国有地を提供することを宮崎県に伝達した。具体的にそれがどこなのか、殺処分の遅滞がいつ解消されるのかは明らかでない。それでも、大多数の国民の理解とは関係なく、問題は少しずつ解決へと向かっている。

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