道路沿いの郊外型店舗の戦いで勝者となったヤマダ電機が、駅前店舗の戦いにも参加したが、売上目標を達成できていない。そのうえ線路の先にあるベッドタウン地域の道路沿い店舗の売上げが下がってもいるという。横ばいの市場でシェア争いをする業界の疲弊を伝える記事。
'09年12月の第2週、歳末商戦の最中に、ある調査会社が、ヤマダの日本総本店に顧客がどこから来店しているかを調べたレポートを入手した。結果は次の通りだ。
【23区内・・・46%/東京都下・・・8%/埼玉県・・・23%/神奈川県・・・16%/千葉県・・・7%】
「つまり、日本総本店への来店客の半数近くは23区ではなく、他県から来た人たちなのです。JR埼京線や東武東上線が池袋駅に直結しているため、埼玉県からは23%も客が流入している。ヤマダの地域別の売上高を見ると、'08年3月期から'09年3月期の1年で、下げ幅の大きい地域として神奈川が約110億円、埼玉でも約10億円下げています」(調査会社の関係者)
自宅近辺では自動車で移動するけれど、都心への通勤には電車を使う、という人は少なくない。利用者の23%を占めるのに、地元への影響が10億円という埼玉県民の購買行動に注目したい。これは「会社の帰りがけにちょっと寄って買う」という需要を示している。逆に神奈川県民は、利用者の16%でありながら地元の売上げを110億円も落としているのだから、高額商品を買っていることが予想される。
神奈川県民のフットワークのよさは少し誤算だったかもしれない。それでも、これまでほとんど取れなかった23区内の需要を吸収して、全体としては売上げを伸ばしているのだから、記事の見出しのような批判は当たっていないのではないか。
しかしそれはそれとして、池袋の本店はにぎわっているけれど、先に建ったモバイルドリーム館が閑散としているのは事実。単純に価格で隣のビックカメラに負けていることが多い(ように私は感じた)ので、地理的にも駅から一歩近いビックカメラの方が繁盛していることに、不思議はない。でも、明るくきれいで通路の広い店舗作りは私好み。生き残ってほしいな。
あと、記事を読む限り、ヤマダ電機が苦戦している根本の原因は、家電市場の成長が予想を下回っていることだ。ライバル社は郊外型か駅前型のいずれかに陣取って「相手の側から客を奪う」ことに注力しているけれど、ヤマダ電機は既に全国展開し両方をやっているので、市場全体が拡大しないと自社競合が起きる。でも、それは仕方ないんじゃないの。シェア自体はまだまだ大したことないもの。売上げの拡大を目指すのは道理だと思う。
いま私の勤務先はiPadやiPhoneの販売好調で間接的に潤っているのだけれども、ヒット商品がどんどん出てくるといい。
池袋の家電市場1210億円のうち、ビックカメラが売り上げ810億円を占めたのに対し、LABIは400億円程度に過ぎない。実情は、自ら仕掛けた"戦争"に苦戦していたのだ。
「ヤマダは日本総本店のオープンによって、池袋商圏が計1660億円程度にまで拡大すると踏んでいました。顧客の大量流入が実現したとして、そのうちの半分を取るという意味で800億円という目標売上高を設定したのです」(家電メーカーの販売担当幹部)
ちなみにこれは、豊島区民がいきなり財布の紐を緩めるという話ではなく、ヤマダ電機が進出していない近隣の駅前から客を奪うという想定だと思う。