以前、テレビ番組の「ごきげんよう」だったかで、お笑い芸人として(とりあえず)成功した人とそのお母さんが登場して、司会者から「お子さんは親孝行ですか?」という質問が出された。回答は事前にボードにまとめられており、番組の進行に合わせて回答を隠していたシールをはがしていくのだけれども、子どもが親の望む安定した職業に就かなかったことを「親不孝」と判断するお母さんが多くてビックリした記憶がある。
お母さん方の言い分は、「いつ人気がなくなるかわからない。心配で寿命が縮む」みたいなことだったけれども、本音がよく表れているな、とも思った。「あなたのためを思って」という気持ちを疑う理由はないが、勝手な話だ。まあ、親の望む子の幸せというのは、ある程度は、自分の幸せを別の方向から見た表現でもあるのだろうな。
ちなみに私の両親は「こっちの方が安全・確実だし、たぶん向いている」というアドバイスはしても、夢を諦めさせようとすることはなかったな。「危険なことに挑戦するのは自由。決めたなら応援はするよ。支援するかどうかは約束できないけど……まあ、私たちが生きている間は、家に帰ってきたらご飯の心配は要らないよ」みたいな感じだった。「人生、命だけ守って他は全部捨てる覚悟があれば、どうにかなる」といったシビアな楽天主義があったな。
中学生向けの補習塾では、周囲があれこれ鼓舞しても「人生を諦める」方へ進む子が多かった。口ではいろいろいうが、実際はあきらめていて、だからとくに努力しない。だけど、ご両親と面談すると、たいてい言葉の方に振り回されていて、私にはそれが不思議だった。まあでも、教師にとっては確率の話だけど、ご両親にとっては万が一の方を心配せずにはいられないんだろうな。