趣味Web 小説 2011-04-25

本音を引き出す仕組み - 僻地支援再考

1.

統一地方選挙の後期分が終った。

東京都御蔵島村のことだそうだ。島なので、人口が300人そこそこでも自治体の独立を守る意味があるということなのか……。

地方税の税収は6000万円そこそこ、使用料が5020.7万円、諸収入が8170.7万円と少し。税収より独自収入の方が大きい。そして予算は11億円超……。都と国から4億円超の支援が入り、地方交付税交付金も3億円を優に超えるから、無理が通っている。これで「自治」体とは、よくいったもの。

御蔵島村が議員=陳情係というのでは、教科書的な「健全な地方自治」は成り立たない。住民の負担と行政規模の乖離はあまりにも激しく、御蔵島村の財政は東京都議会の胸先三寸である。

2.

独自収入と支出の比率は絶望的であり、もはや御蔵島村が財政的に独立できる望みはない。「一時的に手厚い支援をすれば、その後は支援なしでやっていける」とは考えられない。

こうした自治体の住民には、生活水準を維持して都市へ移転するか、生活水準を落として現在地に残るかの選択を促すべきだと思う。いま多くの日本人が「よりよい生活」を求めて生まれ育った街から移動している。強制ではないならば、移転の促進は残酷ではないと考える。

具体的には、年間1人あたり125万円(≒4億円/320人)の支援を、個々人が現金で受け取るか、本州との永遠に埋まらない生活格差の穴埋めに投入し続けるか、当人たちに判断を任せてはどうか。

例えば「現在の支援策を打ち切って年間1人あたり125万円の現金を支給する。村を出た後も5年間は支給を継続する」と決めたらどうなるだろうか。もし全島民が支給金の全額を村に寄付すれば、従来通りの行政を維持できる。が、そうはなるまい。

年間1人あたり125万円、4人家族なら年間500万円、5年で2500万円。それだけの金額が自分たちのものになるなら、島民の多くも、島を出る方が合理的だと判断するのではあるまいか。いまはどうせ自分のものにならないお金だと思うから、「都と国は半永久的に御蔵島村への支援を続けるべきだ」というのであって、本当は島での生活に、投入されている金額ほどの価値を見出してはいないと思う。

人々の本音を引き出す仕組みを構築できれば、自ずと不合理は解消されていくだろう。

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