企業が求めるコミュニケーション能力とは【非エリート編】
組織の底辺で「コミュニケーション能力が高い」といわれるのは、私の経験上は、こういう人。
- 問題を一人で抱え込まない。マズイことになったときは「困ってます。助けてください」といえる。個人レベルでは幾分ミスが多くとも、部署としてのアウトプットの品質は高く保てる。
- 「またかよ」といわれても、心を閉ざさない。問題が解決するまで、あるいは自分の技能が十分に高まるまで、人の協力を取り付けることを決して諦めない。こういう人は、個人としての技能・技量が並以上になるだけでなく、技術的成果や見落とし・勘違い事例の広報マンとしても機能するので、チーム全体の技能向上とミス削減につながる。
- 繰り返しを厭わない。仕事も人間関係も、何の変哲もないことの繰り返しで成り立っている。その些細なことの積み重ねに、手を抜かない。例えば挨拶もそう。とにかく続ける。続けるだけで圧倒的な差になることを、頭でわかっているだけでなく、本当に実践できている。
- 困ったときに頼れる先輩や各部署のエキスパート、気軽に相談できる同僚を、いつの間にかたくさん作っている。「それなら**課の**さんに相談してみます」「えっ、顔見知り?」「先週も飲みに行きました」
- 同じ部署の人がどんな仕事をしているか、興味関心を持ち、きちんと把握している。ちょうどいま空いている試験機や実験道具を認識しているので、順番待ちで時間を空費することなく仕事をどんどん進められる。外注部品も納期に余裕を持たせてコストカット。そんなわけで、開発が早く、しかも予算が余る。
- 小さな声を聞き逃さない。消え入るような挨拶にも、必ず返す。地獄耳だが口は堅い。人の悩みに敏感。そっと耳寄りの情報を教えてくれる。「**の件、**社の製品が使えそうですよ。これ、カタログです」……なぜ私の悩みを知ってるの? いやホント、助かる。
前半3つは、私が上司や先輩に繰り返し指導されたことでもあります。先輩方には、「自分たちがつい邪険にするから後輩が没コミュニケーションになるのではないか」という問題意識がありました。いまは私もそう。だけど、本当にスゴイ人は、私のようにコミュニケーションが苦手な先輩社員も、サクッと使いこなします。
神業みたいな人心掌握術は、どうせ真似のしようもないから、悔しいも何もない。映画を見るように感嘆の声を上げるだけ。だけど、「愚直にやる」ことの凄味には、ガツンとやられました。そうか、「決して諦めない」ってのは、こういうことか、私は口先男でした、すみませんでした、心の薄皮一枚を剥いだらもう諦めてました、その気になればできるつもりでいたけど、私には絶対に不可能でした、ゴメンナサイ、みたいな。
ただ、こういうスゴイ人が、会議のような場でも有能に見えるかというと、そうでもない。採用面接でもオーラは出てなかったと伝え聞く。一人で喋らせると、平凡な印象なんです。先日、新人の最終面接を控えた偉い人が、「あいつみたいなのを採りたいんだが、見分け方がわからん」と困っていました。
余談:
私の妄想であるけれども、企業が求めているコミュニケーション能力とは、人当たりが良いとか、友達が多くいるとか、そういう能力ではない。企業が求めているのは、他人に未知の事柄を説明するという能力である。
リンク先の記事に書かれているのは、おそらくエリートに求められる「コミュニケーション能力」でしょうね。会議でみんなの同意を取り付けられる提案力、プレゼンの説得力、などなど。一般人には、もっと他に「本当は大切なのにできていないこと」がたくさんあると思います。
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注意書き
- 筆者は徳保隆夫(とくほたかお)です。1980年愛知県生まれ。千葉県成田市育ち。メーカーに技術者として就職後、関東各地を転々としています。……という設定です。
- 私の文章は全て実記ではなく小説なので、客観的事実と異なる記述を多々含みます。
- 著作権は主張しません。詳細はInfoで、過去ログなどはNoteでご案内します。