趣味Web 小説 2012-01-03

結局は消費者の選択なんだけど

1.

プロジェクタの高さ調節の足って、なぜかとても弱い。10数年前に大学にあったものも、いま会社にあるものも、高さ調節の足を伸ばしても、突然ガタッと落ちてしまう。その他あちこちで利用するプロジェクタにも、同じような状態のものが多い。仕方ないから本を積み重ねてプロジェクタの下に置く。

足が雄ネジ、本体側が雌ネジなんだけれども、雌ネジが樹脂なので、適当に使用しているだけでネジ山が潰れていき、ダメになってしまう……のではないかな。でも、雌ネジを金属にするだけで、こんな問題はまず起きなくなるのに、どうして雌ネジを樹脂にするのだろう。

私も仕事で樹脂部品の設計をやったりしたのだけれど、そのとき、本体側の雌ネジを金属製にするコストって、せいぜい200円くらいだとわかった。それで、「えー?」と思って。まあ多分、高級機なら雌ネジが金属になっているに違いないけど、会社にあるのだって、安いといっても3万円くらいはしたんだろうし……。

ハイテク商品が、やたらローテクなところで相当に使い勝手が落ちていて、消費者はイライラ。でも、店頭やカタログで、消費者がちゃんとそういうところで商品を選んでいるのかというと……? だからこれって、消費者の自滅だといえば、全くその通り。解決策も思いつかない。ひょっとして、「普及帯の商品でも金属製雌ネジを採用しているメーカーがじつは存在するのに、私がプロジェクタを借りたあちこちの職場や会場でプロジェクタの購入を担当している部署の人らは、全くそういうことを知らないし、知ろうともしていない」のだろうか。もしそうだとしたら、状況は完全に絶望的。「プロジェクタの使い方が荒い利用者が多くて困る」くらいに思われていたりして。

雌ネジを「樹脂でいい」と割り切れば、高さ調整足の本数分だけ、金属部品を削減できる。部品代の削減はもちろん、インサート成形の制約または部品取り付けの手間もなくなるし、塗装についても悩まずにすむ。店頭でアンケートしたって、「高さ調節の足が弱くて不便」なんて話は、「あー、いわれてみると経験あるわー」くらいなものなんだろうな、きっと。そりゃ雌ネジに金属使わないよな。原価を200円削減するよ。店頭価格3万円の商品で原価200円って、相当にデカいし。

どうしようもない。うん、わかる。どうしようもない。……。

2.

カール事務機がALISYS(アリシス)というパンチを発売したとき「これで歴史が変わる」と私は思ったのだけれど、実際には地味にしか変わらなかった。アリシスは日本文具大賞を受賞したし、はてブでもアリシスの紹介記事が相当に注目されたけれど、世界は変わらなかった。

まあね、多くの点でかゆいところに手が届いて「使いやすくなった」とはいえ、「それだけ」といえなくもない。私にとっては待望の機能が満載のアリシスだったけど、パンチを買うときに、そういうところを見てない消費者が相当に多かったということなんだろうな。

そういえば、総務課から私の所属する職場に支給されたパンチも、アリシスじゃなかったんだよな……。ふだんいちばんパンチを使っている部署の人がアリシスを買わないんだから、「はぁ、そんなものか」と思ったね。ちなみに小型ステープラーは、ずいぶん前から新規購入分はみなフラットクリンチ方式になっている。

オマケ

そこまでやるか!文具王 高畑正幸の最強アイテム完全批評 (日経ホームマガジン)

はてブで話題になったアリシス紹介記事は高畑正幸さんの連載記事のひとつ。ネットに過去ログは残っているのだけれど、本にもなっている。人々の長年の悩みを見事に解消してみせたのに、なぜか新定番になれなかった商品の墓標のようでもある、エンジニア的には読んだ日の夜に涙がこぼれてくる一冊。

どの商品も、私の視界の外でそこそこ売れてはいて、開発費のモトくらいは取れたのだろうと思いたい。そうとでなきゃ、悲しすぎる。自分よりずっとすごいエンジニアの、これほど見事な(門外漢でも一撃で素晴らしさが理解できるほどの)仕事は、経済的にも報われていてほしい。

その点、産経新聞で毎週月曜日に連載されている『人気商品開発ヒストリー』は、少なくとも「小さな成功」までは実現した商品を題材にしているから、読んでいて楽しい。

Information

注意書き