趣味Web 小説 2012-01-04

100万円のプロジェクタ

会社の大会議室のプロジェクタは天井に固定されているタイプで、工事費とかを含めて100万円くらいしたそうだ。他の部屋で使っているプロジェクタは最低価格帯に近い3~5万円のものなので、「100万円って……そんなの、元が取れるの?」と思っていたのだけれど、だんだん印象が変わってきた。

大会議室では、スクリーンも天井に固定されている。プロジェクタとスクリーンの相対的な位置関係が固定なので、最初に面倒な調整が必要ない。すると、部屋の引継ぎが非常にラクなんだ。

大会議室は人気があって、月曜日あたりは朝から夕まで1時間刻みで別々の会議が入っていることもある。「適当な机の組み方は会議ごとに違う」といったこともあり、各会議が終了する際に、後片付けするのがルールになっている。だから会議が「9時から」だとして、最初の1~2分は準備の時間になる。いま、サラッと「1~2分」と書いたのだけれど、プロジェクタ使用で、なおかつ1~2分で準備を終えて会議を開始できるのは、じつは大会議室だけ。プロジェクタの電源を入れ、スクリーンを下ろし、PCを起動して情報コンセントにケーブルを接続する。同時に他の参加者が机を組む。この作業が、大会議室でだけ、スムーズに進む。

他の部屋だと、まずプロジェクタに電源ケーブルを接続するところから始める必要がある。壁にプロジェクタへの電源供給を断つスイッチがないから、電源ケーブルの抜き挿しをしないと、待機電力云々の問題になる。それからピント合わせや角度などの問題が出てくる。さらに、ケーブルが邪魔で机の組み方に不自由があり、仮に「可能」な組み方でも、ケーブルを越えるのに手間がかかる。

スクリーンもプロジェクタも可搬式の部屋が、単純には最も自由に使用できるはずだが、実際には「サクッとできること」だけが真に自由で、面倒なことは自由でない。結局、大会議室以外では、「プロジェクタを使用する=特定の机の配置を受け入れる」となってしまっている。

大会議室では、「プロジェクタとスクリーンの位置は固定」とすることで、他の「もっと大切なこと」を実現しているんだな。100万円分の価値はあったんだろうと、いまは思う。

補記:

もし大会議室の100万円のプロジェクタが「元を取れる」なら、他の部屋も……とは思わない。大会議室人気の高まりは、会議時間の圧縮といった効果も生んでいる。2台目の登場には、そうした「いまある効果」を損なう面もある。収穫逓減の法則は強力であり、2台目以降は費用の元を取るのが難しい。

Information

注意書き