Book Guide 2004-03-10

タグ入門ガイド

本書は薄紫が印象的な2色刷りの版面、文字が少なく余白の多いシンプルで軽いレイアウト、といったあたりに特徴がある HTML 入門書です。本書の美点は贅肉を削ぎ落としたすっきり感、上品さにあります。書店で売れ筋の入門書は表紙も版面も図版たっぷり、注釈たっぷりで、良くも悪くも「いかにも入門書」です。そういった本を「センスがない」と思い、人前で読みにくいと感じる方も多いでしょう。あるいは、あまりにカラフルすぎて「どこが大切なんだかよくわからない」とか。値段にちょっと疑問を感じないでもない薄さ、説明の簡明さが気になりますが、上品な本はたいてい少し高めの値段なので、単純に比較すべきではありません。

さて、私は本書を高く評価いたしません。なぜなら、解説に誤りが非常に多いからです。といっても、入門者にはその誤りを指摘することはできないでしょう。本書に書かれている通りにすれば、説明通りのことが実現されるからです。つまり、一見、正しいことをいっているようにしか思えないわけです。「ならば(少なくとも入門者にとっては)別に問題ないのでは?」というあたりが思案のしどころでしょう。

現在、正しい解説を志向している入門書が何冊かあります。「HTML&スタイルシートトレーニングブック」「HTMLとスタイルシートによる最新Webサイト作成術」などがそうです。本書のレイアウトには怜悧な美しさがあり、一目で気に入ってしまった方もいるかもしれません。しかし、とくに本書にこだわる理由がないならば、「正しい入門書」を優先して検討なさることを勧めます。

最後に念のため。本書は「ホームページ入門」系の本とは異なり、FTP や WWW の仕組み自体の解説、配色サンプルの提示などはありません。あくまでも HTML の入門書です。この点には、よく注意してください。WWW について何一つ知識のない方は、本書を読み終えても Web サイトを公開できません。内容は入門レベルですが、本の前書きにある通り、「何が基礎基本なのかよくわからなくなってしまった初級者」向けの本です。

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