HTML の中級リファレンスです。著者は WWW 黎明期から HTML の解説書を書いているのですが、W3C の勧告を一度も精読していないようです。過去の著書と同様、本書にも情報の不足と不正確が目立ちます。最新仕様にきちんと対応したリファレンスは数少ない、と著者は述べていますが、本書もその他大勢の1冊といえます。
著者は基本的に HTML をブラウザでの表示結果を指定するものと考えており、文法規則に無頓着です。とくに表示結果の都合から説明できないルールには冷淡で、例えば要素の入れ子ルールは見事に無視されています。本書が示すサンプルには入れ子ルールに反するものが多数ありますから、参考にしてはいけません。
本書は紙面のデザインも単調で、読みにくくはないものの工夫のない印象があります。
「標準HTMLパーフェクトリファレンス」は本書を完全に代替します。ABC 順に要素を並べる構成、中級者仕様の堅実な紙面、そして W3C 勧告に準拠し全項目を確実に収録……正確かつ十分な情報量とコンパクトなブックデザインを両立した傑作です。この本が登場した現在、本書を勧める理由はもはやありません。