CSS の初級リファレンスです。本書は CSS の全貌を紹介することではなく、CSS の主な装飾機能を多く紹介することに注力しています。プロパティで項目を立て、主な値との組合せをまとめて紹介するのではなく、特定のプロパティと値の組合せを項目に立て、こうすれば**できる、と解説しているわけです。これでは CSS を体系立てて理解することは不可能で、バラバラの知識を片端から覚えていくことになります。
本書がこうした構成を採用しているのは、CSS を HTML 文書におまけ的な彩りを添える技術と認識しているからです。背景色を指定したい、文字の大きさを変えたい、等々、思いつきで装飾を追加していくことを想定しているので、CSS をきちんと学ぶ必要性を感じていないわけです。しかし本来、CSS は多くのプロパティを組み合わせて文書全体の「スタイル」を提供する技術です。バラバラの知識の寄せ集めでは、これは実現できません。
本書はたしかに、入門者には見やすくわかりやすいのでしょう。しかし先につながらない本でもあります。サンプルのマークアップに div 要素と span 要素が濫用され HTML への誤解も招きかねません。CSS をきちんと学べる初級リファレンス「そのまま使えるスタイルシートサンプル集」との比較検討を勧めます。