Book Guide 2005-03-16

電波男

恋愛をテーマとした易しい社会評論+生き方本です。

電車男」はアキバ系男子が脱オタクして負け犬と恋愛関係を結ぶ物語。このような物語が礼賛されるのは、現代日本の支配的価値体系が恋愛資本主義だからだ。20年余の恋愛資本主義体制は幸せなモテと不幸な非モテの2極化した社会を現出した……この世界観を前提とし、非モテが幸せになる方法を示すのが本書「電波男」です。

著者の主張は、非モテはオタクになって価値の基準軸を「萌え」に置け、というもの。結論先行で筆が走っており、反対者の意見を覆すには力不足。しかし反対者にも一読を勧めます。賛同は無理でも、オタクになる非モテのメンタリティを理解し、無体な差別を止める契機となる一冊だからです。

本書は十分なページ数を確保して議論の土台となる情報をきちんと紹介していますが、負け犬本ベストセラー「負け犬の遠吠え」「だめんず・うぉ~か~」が既読なら、いっそう楽しめます。また岡田斗司夫の「ぼくたちの洗脳社会」「フロン」「30独身女、どうよ!?」「結婚ってどうよ!?」を参照すると、大いに理解が深まります。

なお、本書の文体は冗長で癖が強く、いわゆるオタク文化を反映したフレーズが頻出します。異文化の文体に不安のある方は、購入前に著者のウェブサイト「しろはた」をチェックされるとよいでしょう。

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