「電車男」のファンブックです。ネットで否定論が渦巻いている状況については、竹熊健太郎さんのエッセイの中で僅かに触れられるのみ。素直な読者のための、素直に編集された素敵アイテムです。ヘビーなネットユーザには、あまり魅力のない商品でしょう。
新潮社版は文芸書らしく本文以外の情報を敢えて省略しており、いうなれば不親切な本となっています。簡単な用語集さえカバーを外さなければ読めない徹底ぶり。それはそれでよい効果を上げていると思いますが、エルメスのティーカップやベノアティーがどんなものか知らない多くの読者にとって、もどかしい気分が残ったことは否めません。
そこで本書の出番です。電車男とまとめサイトの「中の人」へのインタビュー、写真やイラストも駆使したわかりやすい基礎知識の解説記事(物語の舞台となった場所の紹介や、登場した各種小物の写真、ファッションの図解、他)、各界の著名人による分析記事、マンガ版の情報など、よくまとまっています。そして親切なことに「電車男」のあらすじも紹介しているので、映画版だけに興味のある方の予習にも便利。
なお、「電車男」を生んだ 2ch の文化に興味のある方には「電車男は誰なのか」を、様々な否定論を知りたい方には「封印された『電車男』」を勧めます。