本書は著者が2004年に刊行した「日本の景気―復活の兆しはここにある!」のアップデート版といえます。今日に至る長期の景気拡大を予測した著者は、予想の実現を背景に、いっそうの自信を持って執筆されています。
景気循環の考え方に基づく予測は、しばしば経験則に過ぎないとして軽視されます。実際、機械的に景気循環が生じることはありません。では循環論は無力かといえば、さにあらず。著者が豊富なデータを循環論の立場から再整理する手際は見事であり、循環論が経済指標の読み解き方として帰納的に一定の説得力を持つことが示されます。
ただし当然ながら未来のデータは手元になく、景気の展望予測は演繹に頼る他ない。今のところ景気循環は「結果的に観察される」ものでしかないという限界を踏まえ、未来に関して著者は誠実に筆致を抑えています。ゆえに本書を凡庸・期待外れと感じる読者もいるでしょうが、私は著者の慎重な姿勢を評価します。