2006年にいざなぎ越えを迎えることとなった長期の景気回復。景気循環論の立場から、2004年の時点で今回の景気回復が長く続くことを予測していたのが本書です。
景気が循環すること自体は演繹法で説明できますが、「いつ、どのような規模で」を予測可能な理屈は発見されていません。そこで本書の中核をなす実践的な循環論は帰納法で導かれた経験則の集積となっています。しかしこの経験則、再現性の確実さに乏しいのです。とくに景気の転換点を予測するのは非常に難しい。
では本書の未来予測における著者の自信はどこから来ているか。それはITバブル崩壊後の不況が底入れしているというデータです。転換点を過ぎたので、問題は景気回復の持続期間に絞られます。すると、ちょうど今後の日本がキチン・ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフの4サイクル全てが上向きの時期に当っていることことに気づかされる……。
政府・日銀の経済運営も大きな景気のうねりのパーツに過ぎないとして捨象する考え方は、あまりに運命論的、ではあります。ただ、こうした未来予測も、頭の片隅に入れておくのは悪いことではない、と思います。