全てを「砂」に帰すデストラクトの能力に目覚めた主人公キリエは、狂った恋人に盲従し、故郷・恩人・貴族・聖獣を次々葬り去る。水は淀み、光は消え、風もやむ。世界中の人々の笑顔が失われてゆく……。
明るい演出と裏腹に、物語は陰惨です。主人公が異様な判断を重ねる理由は最終決戦で明かされます。プレーヤーが主人公に感情移入できないのは仕様なので、そこは割り切って遊んでください。
ほぼ固定視点の3Dマップ+2DキャラのオーソドックスRPG、パーティーメンバーは6人、戦闘メンバーは3人で戦闘中の入替不可、個人ターン制(素早さが高いとターンが多く回る)のコマンド入力式バトル、BP・ラッシュ・ブロウ・連撃・連結・追撃など独特の戦闘システムあり、アウトフィールドなし。
見た目は今風ですが、高いエンカウント率・レベル重視の戦闘バランス・高いダンジョン難易度・などなど、ファミコン時代を思い出す調整となっており、若い人は面食らうかもしれません。
敵味方双方が連鎖攻撃で1ターンキルを狙う戦闘に違和感を持つ人は多いでしょうが、これは現実の真剣勝負に寄せたシステム。テーブルトークRPGでは防御or回避失敗=直撃=敗北というルールは珍しくありません。ただ、コンピュータRPGでは初期に淘汰されました。本作の再挑戦も成功とは言い難いように思います。
昔風の調整とは逆に今風の箇所も要改善。術技の育成に自由度がありますが、ラッシュで命中を育てず、特性強化を選ばず連結しないのは制限プレイに等しい。個性的なカスタマイズのメリットが薄いため、戦闘経由のSPは自動配分、奥義書経由のみ自由配分の方が親切。その他、音声付のシーンで会話を読み飛ばせないのもつらい。
本作の難点を多々書きましたが、市場による淘汰で大作RPGの金太郎飴化が進んだ昨今、1年に10作品以上遊ぶ方なら、この個性派RPGは意外と面白いと思います。