違法行為を取り締まるのはよい。パナウェーブ研究所のメンバーを駐車違反などの容疑で逮捕するなら話はわかる。有事に備えて警官を配備するのも正しい対策だろう。
パナウェーブのような変な連中を怖がる住民たち。その気持ちは理解するけれども、地方自治体が積極的に道路を封鎖して期待に応えてしまうことを、私は批判する。パナウェーブが差別され、自由を制限される理由は何か? 変な連中だから、だ。いじめの構図なのだ。肌の色が違うから差別する、ユダヤ人だから差別する、キリシタンだから差別する、というのと同じなのだ。
白装束、覆面、たしかに怪しい。警戒心は持っておいた方がよかろう。警察は監視を怠るべきではない。だが、道ゆく先々で道路を封鎖して行き先を閉じていくという地方自治体のやり方はどうなのか? パナウェーブの人権はどうなっているのか? ゆえなく個人の自由が制限されないこと、これは民主主義国家の根幹である。怪しいやつらには十分警戒しつつ、しかしあくまでも彼らの自由は守られなければならない。
かつて私の会社は公害事件を起こしている。こうした明らかな問題があってさえ、社員の家族が住民登録の受付を拒否され、子弟が地域の小中学校で教育を受けられなくなるなどという事態は起きなかった。しかしそれは、当然のことではないのだろうか? 今回はたまたま白い車列に子どもの姿は確認されていないようだが、オウムの前例があるから、私はやはり現状を危惧せざるをえない。
理性を失った住民の声をハイハイと聞く行政担当官は恐ろしい。自分は常に社会の多数派から人間扱いされると能天気に信じていられる人は、ある意味、幸せだ。そして危険だ。パナウェーブを恐れる住民の期待に添って行動する地方自治体は、朝鮮人が井戸に毒を入れたという噂が広まったら、当然のような顔をして朝鮮人を街から追い出すだろう。「だって、住民が不安を訴えているんだから」といって。衆愚に乗っかって理性も法もキャンセルするような方々が、地方自治体という権力装置の責任者となっている日本の状況は悲しい。
パナウェーブ対策は、あくまでも法律違反の取り締まりと厳重な監視に限定するべきだ。単に住民が怖がっているという理屈で、無法を正当化してはならない。ふつうでない(=少数派である)ことだけを理由に、人権を侵害するようなことがあってはならない。