趣味Web 小説 2003-05-18

幅固定も文字サイズ固定も「やってよい」

フォント固定でも問題ないとか、スクロールバーの変更でも全然良い! と思っている人がリンク集を作る時に多少役に立つかと思って作成しました。

CSSでスクロールバーの色を変更することを忌避する方というのがいる。それはそれでいいのだけれど、同じ人がbox-sizingの使用には全然、嫌な顔をしないからわけがわからない。IEの独自拡張はダメで、Mozillaの独自拡張ならいいのだろうか? type="text/css"とかそういったことをmeta要素を使って宣言している以上、独自拡張は一律にダメである。あるいは、Mozillaの独自拡張をOKとするなら、IEの独自拡張だってよしとするのが筋じゃないのか。とくにスクロールバーの色変更なんてのは、他のUAでの閲覧に一切の害がない。レイアウトの大幅な崩れにつながるbox-sizingの方がよほど悪質だ。

さて、CSSによる文字サイズの固定を嫌う人はじつにじつに多いのだけれども、私は皮肉をいわせていただく。「じゃあ、W3Cに、CSS3では文字サイズを固定できなくするよう、意見したらどうですか」と。具体的には、文字サイズをpx単位やpt単位などで指定することを禁じればいいわけだ。そもそも文字サイズの固定は、仕様に何ら違反していないということに注意すべきである。

WinIEでは昔から文字サイズの固定を解除できる。したがって、市場に出回っているUAの9割以上において、文字サイズの固定はまったく問題ではない。目が悪いとか、モニタの解像度の問題で文字が小さく表示されすぎる場合には、Webページで指定されたフォントサイズを使用しなければいいだけの話。問題なのは、文字サイズ固定の解除方法があまり知られていない、ということに過ぎない。Mozillaだって、最小文字サイズの指定をしてやれば問題を回避できる。CSSを適用しなければ、もっといい。Operaではユーザモードを使えばいいわけだ。

私がいいたいのは、スクロールバーの色変更をダメというなら、box-sizingなどのMozilla独自拡張も取り締まるべきだということ。そして、文字サイズの固定は、市場の95%以上のUAで解除できる以上、どんどんやってしまって問題ないということだ。少なくとも、文字サイズ固定はCSSの仕様上、何ら問題がないのだから、CSSでイケてるサイトリンク集の選定基準とするのはおかしいだろう。

もうひとつ、リンク集のもとになっているスレの方でよく出る意見として「幅固定批判」がある。バカか。幅は固定していいに決まっている。だから仕様上、幅固定が可能となっているのだ。CSSで幅を固定する限り、それは解除できる。よって幅固定で不都合のある場合にも、何ら問題は生じない。UAの挙動が仕様に添っていれば、CSSによるあらゆる指定は解除できる。WinIEでも、ユーザスタイルシートを適切に用いれば万事問題ないのである。おおよそ、以下のようなユーザスタイルシートを用意すればよい。

*
{margin:0 !important; padding:0 !important;width:auto !important; height:auto !important; float:none !important; position:static !important; font:normal normal normal 100%/1.5em Osaka,"Times New Roman",Times,"MS Pゴシック",sans-serif !important; text-align:left !important; text-decoration:none !important; border:none !important; color:#000 !important; background:#eee !important;}
/* 以下、自由に自分好みのCSSを記述する */

文字サイズ固定の解除なんてのはWinIEでも簡単にできるというのに、なぜみな「できない」だなんて嘘をつくのか。

単にやり方を知らないならご愁傷さまだが、知ってて知らないふりをする連中はたちが悪い。たぶん、そうした方々は私がたいていのサイトをOperaのユーザモードで閲覧しています、というと嫌そうな顔をするのだろう。CSSなんてのは無視できる、あらゆる指定は解除できる、そういった情報を広めようとせずに、CSSで文字サイズを固定するのをやめましょうだなんていっているのはバカだ。

文字サイズは固定していい、だけど閲覧者はそれを無視できる……だからCSSデザインはアクセシビリティー向上に有効なのである。肝腎なのは、最終的な文書のプレゼンテーション方法を、製作者ではなく閲覧者が決めるということだ。

製作者がちまちまと自己規制して、そのままでもそこそこアクセシビリティーの高いCSSとやらを書くのは、むしろCSSの仕様の背景にある精神に反する行為である。アクセシビリティーの向上について、中途半端な立場である。文字サイズや幅の固定などが本当によくないものだと信じるのなら、仕様からそれらを排除するよう努力したらどうか。それは、やろうとすればできる話である。仕様が許しているものを自己規制で潰し、製作者CSSが必ず閲覧者に利用されるよう画策するのは、どうかしている。

製作者がおすすめのCSSを提示するのはよい。だが、閲覧者がそれを無視できる事実を隠し、製作者側の自己規制で諸々の不具合に対応してしまうのは、世のため人のためにならないだろう。

ダメな製作者は絶対にいなくならない。だから、製作者の努力で世界を変えるのは、自ずと限界がある。しかし閲覧者がHTML文書の表示結果を制御する手段を持てば、一挙に問題は解決する。製作者のくだらないあれこれの指定を無視して、全部を閲覧者が決めてしまえば……背景色と文字色の関係で悩むことも、小さすぎる文字に泣くことも、重たい画像に苦しむこともなくなる。そして現在、既にそれは可能となっていることに注意すべきだ。

UAはさっさとCSS2に完全対応してほしい、だなんていう人がいる。私はむしろ、不具合の多い現状こそ、本当の意味でCSSの精神が普及する最後のチャンスだと思う。UAがCSSに完全対応してしまったら、製作者はより一層横暴になり、閲覧者に自分のCSSを無視させまいとするようになるだろう。製作者のCSSを閲覧者が利用するのは当然だ、という発想が強くなるだろう。

……といったことを、CSSリンク集のthumbnail版を見ながら思ったのだった。私はOperaのユーザモードで閲覧しているから、私の環境からは、どのサイトも昔の闇黒日記のように表示されている。製作者CSSを適用するとこんな見た目になる、ということを初めて知るサイトが多く、おもしろかった。CSSコミュニティーでは闇黒日記デーというのがときどき挙行されるけれども、私はとくに何の感興もない。私の場合は、いつだって闇黒日記デーなんである。

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