趣味Web 小説 2003-05-24

バッシングの理由

酔っ払った会社員が終電を逃がして駅員に暴力をふるう、といった話はよくある。じつに理不尽な暴力だ。しかし暴行罪なんてのは、ひどく怪我をさせた場合でもなければ微罪だから、万引きと同様にいちいち逮捕なんてされやしない。傷害罪相当のひどい怪我を負わせるか、あるいは被害にあった駅員がひどく怒るかすれば逮捕もされうるが、稀なケースである。だから、JRの発表する暴力事件の件数と、警察の出動回数が大幅に食い違うこととなる。

街中を巡回中のパトカーが、あらゆる道路交通法違反を取り締まることがないように、警察官だってあらゆる暴力(の結果としての暴行罪)を取り締まるわけではない。そんなわけで、校内暴力やら家庭内暴力やらは、しばしば放置される。社会から暴力が徹底排除されない所以である。まあ、ホームドラマなんかでも暴力シーン(「バカヤロー」ボカッ)はちょくちょく現れるわけだが、被害者がいちいち警察を呼ぶこともなければ、もちろん加害者が逮捕されることも滅多にない。それがいいことなのかどうかは、判断の難しい問題だと思う。

さて、JOYさんは暴行犯(あるいは傷害犯だろうか)の一味だ。それなりの社会的制裁を受けて当然である。しかしながら、JOY祭はいささか尋常ならざる状況だといえる。よくある暴力事件が、なぜこれほど多くの人々によるバッシングを受けるのだろうか? それは、JOYさんが暴力をふるった理由が、あまりに世間様の常識とかけ離れていたからだ。常識外の理屈に起因する暴力的行為は、(それがよいものであれ悪いものであれ)理解できる暴力的行為よりもひどく社会に叩かれる。

JOYさんの関与した暴力事件は、微罪の類いだ。おそらく問題のお店も店員も(ひどく怪我をしていない限り)被害届を出していないだろう。よくある事件、そのまま何事もなかったように忘れ去られていく事件に過ぎなかったはずだ。この程度の暴力事件は、毎日毎日、全国で無数に起きている。全部、ちゃんと取り締まられるようなら、暴力的ないじめで自殺するような人はもっとずっと減っていくはずだ。

いじめを苦にして自殺した例をみていくと、何回も警察に相談していたというケースが散見される。打撲傷、あるいは骨折に至るようなひどい暴力事件であっても、加害者が逮捕されないことは少なくない。事情聴取、厳重注意、それで終わってしまうのだ。いや、警察が動けばまだいい。話だけ聞いてそれっきり、という話は枚挙に暇がない。

JOYさんがバッシングを受けることはよいことだ。これにビビって悪いことをする人が少しでも減ったらいいと思う。しかし、JOYさんたちの行為は本当に重大な犯罪なのか、JOYさんたちは特別に凶悪な粗暴犯なのか、JOYさんたちはなぜ特別にこれほど大きく叩かれるのか、それらは一考を要する問題だ。JOYさんの日記が、「酔っ払って店員に絡んで殴っちゃいました」だったらこれほど大騒ぎになったろうか。なったはずがない。JOYさんが日記に書いた暴行の理由があまりにあんまりだったから、こういう騒ぎになっている。

JOY祭のギャラリーには、自分は暴力行為に対して怒っているのだ、と勘違いしている人があまりにも多過ぎる。実際にはJOYさんたちの異常性に直感的な嫌悪感(のようなもの)を抱いて、それで猛烈なバッシングをしているのだ。理解できる暴力なら、こんなバッシングは起きていない。JOYさんを叩くのはいい。世の中のためにもなるだろう。だが、怒って叩いてあースッキリした、というだけで終わってしまうのは虚しい。

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