筒井康隆の「ベティ・ブープ伝」を読んだのは何年も前のことで、内容などほとんど覚えていない。にもかかわらず、どこかの会社のADSLのCMでベティさんが登場しているのが視界に入った途端に、まじまじと10数秒間画面を凝視してしまった。毎年たくさんの文章を読み、読んだそばからその内容を忘れていっているわけだけれども、頭の中のどこかに強固に残っているものがあるのだな、と思った。
先週の水曜日は9時過ぎに食事をしたので「トリビアの泉」を見れたのだけれども、そこに筒井康隆が出ていた。新聞を読みながら視聴していたので聞き落としたのかもしれないけれども、あんまり発言がなかったような……。私は筒井さんの本が好きなのであって、タレント活動には特別に興味はないつもりなのだけれども、たまたまテレビで見かけると、いつの間にか他の出演者を無視して筒井さんを目が追いかけている。筒井さんの本は全集を読んだ(読破できなかったけれども8割方読みました)ほど好きなのだけれども、そうしたことがやはり強く影響しているのだろう。
ファンなら当然知っていることなのだけれども、念のため書いておくと、筒井さんはもともと俳優になりたかったのです。だから作家として売れ出してから劇団を立ち上げ、脚本もいくつも書いてきたんですね。90年代に入ってから筒井さんは本当に、本格的に俳優として活躍を始めたわけなのですが、その演技が巧拙はともかく(私にはよくわからない)、それは決して作家の思いつきでも単なる道楽でもないのです。
一番やりたいことを、ついにできるようになったわけで、羨ましい人生ですよね。