海外編は新刊が文庫で出ることが多いのが嬉しい。ランキング上位の作品はハードカバーが多いのですが……。私の場合、海外編についてはIN☆POCKET11月号を参考にしています。毎年11月号の特集は文庫の翻訳新刊だけを対象にしたランキングの紹介なんです。財布の中身をあまり心配しないでいいので、安心して読めます。
私にとって「このミス」のランキングは、「将来の文庫化を待つリスト」に近い位置づけなんです。といっても、晶文社ミステリなどはいつまで待っても文庫にならないのだろう(早川の異色作家短編集など前例は多い)し、ちょっと悩ましい作品もちらほら。
未紹介の旧作の発掘がここ数年盛んだということもあって、新人作家のランクインが年々減っているのだそうだけれど、それでも海外編は国内編と異なる空気があります。「このミス」の国内編は以前から新人のランクインが多くありません(今年は0)。とくに乱歩賞受賞作が毎年のようにランクインする文春への対抗心からかどうか、新人賞の受賞作には非常に辛い。新聞や雑誌の書評に多く取り上げられた作品も、たいてい選外なのです。
その点、海外編は強烈なランキングになることがしばしばです。なんと今年の1位は新人の作品ですよ! ちなみに、2003年版1位「飛蝗の農場」のジェレミー・ドロンフィールドは新人。2002年版1位「神は銃弾」のボストン・テランも新人。2001年版2位「Mr.クイン」のシェイマス・スミスも新人。1999年版1位「フリッカー、あるいは映画の魔」のセオドア・ローザックも新人。さらに97年版1位「死の蔵書」のジョン・ダニング、95年版1位「シンプル・プラン」のスコット・スミス、同年2位「ストリート・キッズ」のドン・ウィンズロウ、1991年版1位「薔薇の名前」のウンベルト・エーコ、……。まあ、新人といってもデビュー作が紹介されているわけではないのだけれど、とにかく日本での紹介第1作がドカーンとくるのが「このミス」海外編のよき伝統なのです。今年の1位も、もちろんお勧め。
で、紹介第2作が無視されることもしばしばあるのが面白いところ。ボストン・テランの2作目「死者を侮るなかれ」は選外に。「氷の家」で注目されて「女彫刻家」で1位になり、その後も上位に顔を出したミネット・ウォルターズや、第2作の「わが名はレッド」が3位に入ったシェイマス・スミスのようなランキング常連への道は厳しいようですね。前評判が高いのにランキングで振るわない作家は、たいていその後も難しいんです。といっても、「このミス」だけが書評ではないので、本の売れ行きには影響ないと思いますけれども。
ところで、今年からついに裏表紙に掲載される過去のランキングが最近5年分になってしまいました。過去のベスト20に興味のある方は、既にAmazonでは在庫切れになっていますけれども、「このミステリーがすごい!傑作選」を入手されることをお勧めします。古書店を探すと見つかりますので。「このミス」を全部集めようとするよりは、だいぶ楽だと思います。