徳保さんは、ひろみちゅが指摘している「RFIDは車ナンバー読み取りNシステムなどと違い、読取装置がケタ違いに安価になったり、機器自体がNシステムよりも簡単に市場に出回る可能性が高い」という要素をあえて無視している?
「読み取られていることに気がつかないようにスキャンできる」という能力も、車のナンバーや郵便物と比較してもケタ違いにアップすると思う。
無視しているわけじゃなくて、それがどうしたの? ということ。
タグには2種類あります。読み取り機にかざして使うタイプと、アンテナが勝手に読み取ってくれるタイプです。
かざして使うタイプでは、読み取り機からの電波を受け取ると、返事をする仕組みですが、かざさないタイプでは、タグが電池を内蔵していて、常時電波を発信し続けます。学校の門に来たときだけ電波を出すわけではなく、街中を歩いているときも、電車に乗っているときも、家の中にいるときも、電波を出し続けます。
電池内蔵型では電波の届く距離は10メートルから数十メートルにおよびますから、少しはなれたところにいる第三者でも読むことができます。電波の受信機さえあれば誰でも読めるわけです。もし裕福な家庭が通う学校だけがランドセルにタグをつけていたら、悪い人が、受信機を使って、どっちの方向に子供がいるかを探知するかもしれません。
番号だけだから個人情報ではないと言いますが、常に同じ番号を出しているわけですから、たとえば、この家の子供を狙おうと思った悪い人は、夜のうちに家の外から電波を受信して番号を確認しておいて、あとは、登下校の時間に、同じ番号を発信する子供が数十メートル以内に入るのを待つということもできてしまいます。
そういうことができないように、暗号化する対策が必要です。昨今の実験で使われているタグに暗号機能があるかどうか、説明されていません。
父兄の方々は、こうしたリスクもあることを知った上で、本当に便利かどうか検討する必要があります。
警鐘を鳴らす立場の高木さんは危機感をあおるような書き方をしているのだけれど、例えばこの事例、私の感想はいささか異なります。
数十メートルまで近づかなければ電波を感知できないわけです。ふつうに考えると、それなら顔とか服を目で確認できるわけでしょう。人間を配置せず、機械を置くだけで足りるのが違うところなのかもしれませんが、道なりに数十メートル間隔で機械を設置するのでは、小学生の行動範囲を押さえるだけでもただごとでない。車に乗った犯人が、微妙に離れた位置からターゲットを追跡する、といったことを想定されているのでしょうか。
でも、それって、従来からできたこととほとんど違わないと思いませんか?
興信所に浮気調査を頼むと、顔と服装で個人を特定し、行動を追跡してくれるわけです。タグの電波を読み取るにしても、犯人は家でテレビを見ながらというわけにはいきません。電波を受信できる距離が数十メートルにせよ、300メートルにせよ、人を追跡するためには、犯人はターゲットについて回るしかない。顔と服装以外に、個人を特定する手段がひとつ増えたからといって、圧倒的に危険が増大しますか? そんなことはないでしょう。
仮に、その辺を歩いている子どもが身に着けているタグの番号だけから親の財産や電話番号がばれるとなると、確かに下調べ無しで営利誘拐できる、という話にもなります。しかしながら、そうしたクリティカルな問題には、対策がなされているわけです。不正アクセスをブロックし、そもそもデータベースには氏名さえ記載しない(学籍番号など、書類管理の番号に関連付けるだけにする)、など。