趣味Web 小説 2005-02-20

テーブルレイアウト排斥の根拠薄弱について

海外事情に詳しいウェブデザイン情報発信サイト MinuteDesign(閉鎖)は、幅固定推進派として知られています。

じつは海外でスタイルシートによるデザイン制御が主流となりつつあるのは、幅固定(px 指定などにより横スクロールバーを出してでもデザインの崩れを回避する手法)をアリとしたからです。海外では文字サイズだって必要とあらば固定(これも px 指定)を躊躇しませんし、小さな文字の利用も常態化しています。ぜひ主要ポータルの脱テーブル状況からリンク先をご確認ください。

私は"いろは"の先の CSS 第8回で「テーブルレイアウトも絶対にダメとはいえない」という話を書きました。アメリカではテーブルは窓から投げ捨てろといった言説が主流派となりつつあり、Goodbye, Tablesではテーブル使いのデザイナーは、次第に下層階級に属する人間として見なされるようになるだろうなんて脅し文句が出ているわけですけれども、ここは考えどころです。

2年ほど前に散々書いたことですが、製作者が特定のデザインを押し付けたいと願い、閲覧者もまた押し付けられることを望んでいる状況下において、テーブルレイアウトも CSS デザインも、閲覧者にとっては同じです。Douglas Bowman さんがサーバ側の負荷低減と製作コストの圧縮だけを利点に挙げていることには注意すべきです。

ブロードバンド利用者が過半数となり、もはや閲覧者側の表示速度は問題になりません。高速回線の利用者は低速回線の利用者より長時間、インターネットに接続しています(インターネット白書2004年版 資料2-5-1)。回線が太くて長時間ですから、トラフィックの大半はブロードバンドユーザによるものといえます。

製作者にとって CSS デザインはテーブルレイアウトより楽な面が多々あります。けれども、データベースとテンプレートからウェブサイトを構築するほど劇的な省力化はないでしょう。例えば個人サイトにおいて、CSS を勉強するよりブログツールの使い方を勉強する方が、日々の更新の効率化という点ではずっと優れています。サイトのリニューアルだって、データと形式の分離ほど簡単で便利な手はない。(注:というわけで FrontPage2003 はなかなか結構なソフトウェアだと思います。昔の FrontPage とはまったくの別物)

閲覧者にとって、CSS デザイン自体は別に素晴らしいものではない(HPB どこでも配置モードの衝撃を想起せよ)し、製作者にとっての利点も、結局のところ、データと形式の分離に比較したらわずかなものに過ぎません。残る利点といったら、テンプレートの製作が楽になる(場合がある)こと、そしてサーバ側の負荷低減くらいなのです。アクセシビリティは商売になりません(企業のイメージ戦略には有用かもしれませんが、実際には情報の出現順序に配慮したテーブルレイアウト以上のメリットはないでしょう)。

私が Folio Vol.8 でテーブルレイアウトを使っているのは、デザインを破壊する要素が多々ある中、「絶対に崩れない段組」を実現する一番確実な方法だったからです(注:ここで Opera のテーブル解除機能を持ち出すのは話の前提が違う)。そして情報の出現順序の面でも問題がないケースだったからです。

Yahoo!JAPAN のテーブルの組み方が凄いことになっているのは事実ですが、ああいったレベルのテーブルレイアウトと、以前の W3C のテーブルレイアウトを同列に論じる意見には与しません。table 要素は表組みのための要素だから云々といえば、どちらもダメなのでしょうが、W3C の勧告書がそういうことをいっていないのは読めばわかることです。

W3C がテーブルレイアウトを勧めない理由は「非視覚系メディアでのレンダリングで不都合が生じかねない」「横スクロールが生じかねない」の2点です。前者は気をつければ対処可能であり、後者はむしろ横スクロールバーが出ても、デザインが崩れないことを望む閲覧者が多いので、現実に即していません。結局、テーブルレイアウト排斥にこだわる理由があるとすれば、所謂正しい HTML にある通り、宗教めいた話にいきつくのではないか。

日本で CSS デザインが十分に普及しないのは、ある意味当然のことではないかと思います。アメリカ流の CSS の使い方をしてしまったら、アクセシビリティがどうのこうのといったお題目はほとんど吹っ飛んでしまいます。うがった見方をすれば、アメリカの CSS ブームは、ありもしないリニューアルの需要を捏造して飯の種を増やそうという大規模な詐欺なんじゃないかと。あんまり大規模すぎて、騙す側も何をどう騙しているのかわからなくなっているという……(つまり悪気はない)。

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