ブロガーも2ちゃんねらーも、未だ少数派にとどまっています。
という指摘を奇異に感じる方は少なくないでしょう。ネットで盛り上がっているのは反対派ばかりなのですから。しかし、私は小倉さんの指摘は事実だと思います。
ひとつ端的な数字を挙げます。人権擁護推進審議会の「人権擁護委員制度の改革に関する論点項目(2001-09-10)」に対し2001年9月11日~同年10月31日に寄せられた意見は25621通にもなりました。内、書面での意見が25165通ですから、大半の意見が身元を明かしてのものと考えてよいでしょう。人権擁護 - 未来検索livedoorは647件
です。未来検索はウェブログの40分の1しか巡回していないのでしょうか?
「ゲーム脳」は典型的な事例ですが、いわゆるネット世論には、しばしば大きな偏りがあります。国内7000万人のネットユーザの大半は物言わぬ存在です。彼らは基本的に「無関心」ですが、さて、法案を策定した側の意見と、反対している側の意見の両方をきちんと検討した場合、どちらに味方するか? ブロガーが思っているほど、反対派への賛同は得られないだろうと思います。
……なんて書いていたら、産経新聞が本日の朝刊で反対サイト(Ex.人権擁護(言論弾圧)法案反対!/人権擁護法案特設サイト/サルでも分かる?人権擁護法案/人権擁護法案BLOG(臨時))の意見を(マスコミ規制関連を除き)実質的に全面肯定する社説(注:産経新聞では「主張」と題す)を出しましたね。
- 【主張】人権擁護法案 問題多く廃案にすべきだ
三年前に国会に提出され、廃案となった人権擁護法案に代わる新法案が十五日閣議決定され国会に提出される。
出生や国籍などを理由とした差別、虐待は許されない。適切な救済措置などを取ることは当然である。
だが、新法案はあまりにも問題が多い。「人権侵害」の定義があいまいなため、恣意(しい)的な拡大解釈がまかり通る恐れがあるからだ。運用次第では密告社会すら出現しかねない。
憲法で保障されている国民一人一人の「言論、出版その他一切の表現の自由」だけでなく、国民主権も損なわれる懸念がある。
新法案は前法案を踏襲したが、違いはメディア規制条項の「凍結」と五年後の見直しを盛り込んだことだ。
この条項は、報道機関のつきまといや待ち伏せなどの取材方法による人権侵害を「特別救済」の対象とし、犯罪少年の私生活の報道もその対象に含めている。行き過ぎは是正されねばならないが、この条項は、報道の自由を侵す恐れが極めて強い。
問題は、「人権侵害は不当な差別、虐待、その他の人権を侵害する行為」とするあいまいな定義だ。「人権侵害を助長、誘発する行為」も禁止される。いずれも拡大解釈が可能である。メディア規制条項を削除しても、メディアを含め、すべての国民が規制の対象であることに変わりはない。
人権侵害の判断は、法務省の外局として新設される人権委員会に委ねられる。人権委には事情聴取や立ち入り検査などの権限が付与される。拒否には罰金(三十万円以下)を科す。
下部組織の人権擁護委員(二万人以内)は人権侵害の情報収集などを行う。事実上の警察機能を持つ巨大組織の誕生といえる。
ところが人権委、人権擁護委員とも国籍条項が入っていない。従来の人権擁護委員は「市町村議員の選挙権を有する」だったが、新法案では「市町村の住民」にした。外国人を想定しているとも考えられる選考基準だ。
これは、「公権力の行使または国家意思の形成に参画する公務員に日本国籍が必要なことは当然の法理」とする政府見解にも抵触しよう。憲法違反の疑いがある法案は、国会で厳しく検証し、廃案を目指すべきだ。
うわ、一部修正どころか廃案を目指すべき
ですか。私は産経新聞の購読者ですが、この社説には大筋で反対です。一部賛成なのは、人権擁護委員の資格は現行通りが望ましいと考えているため。ところで政府案は自民党法務部会でも異論続出となっていますが、こちらは決して廃案ありきではない。新法に社会的要請があることを認めた上で、まずい点を修正していこうという方向の議論となっているようです。