趣味Web 小説 2005-06-25

勉強のできない人から職を奪う生き方の提案

梅田望夫さんが見ている、どこか遠い世界の補足、あるいは蛇足。

トヨタ も SONY も Amazon も末端に薄給のマンパワーを必要としています。たしかに今、私は東証一部上場の某大企業で研究開発部門に所属しています。けれども、仕事の大半はデータの取得作業です。それは製パン工場ほどひどくはないけれど、レジ打ちより単調。戦車1台を動かすためには、その何倍もの整備・補給車両が必要になる……そんな感じ。

梅田さんがいう致命的とは、現場作業員に「落ちる」ことと私は解釈したので「飯を食うためには勉強だけでは不足」はウソだと書きました。私は就職活動の前半3ヶ月間「工員になりたい。工場で雇ってほしい」と言い続けましたが、返事は「大卒枠はありません」。ところが工場見学の際に現場の人の話を聞くと、「大学で勉強してきたような人が作業するのが理想なんだよ。俺ら、わかってないもんだからさ、よく本社の人に怒られちゃうんだよねえ」というのでした。

薄給のマンパワーは日本国内でもずっと必要とされ続けるし、同じ仕事をするなら賢い方が楽です。4年制大学の工学部卒のが工業高校卒と同じ作業をする。私大文系出身者が商業高校卒と同じ事務作業をする。それはもったいのかもしれないけれど、学歴にプライドを持たないのであれば、ひとつの幸せな生き方なんです。

カネに執着がない人が増えれば増えるほど、情報はどんどんオープンになり、モノを作る行為に対する価値が下がり、モノを作っても買ってくれない時代になる。特に「カネを得る」ことにしか興味を持たなかった人間は、この先10年は辛いだろう。新しい考え、アイデア、仕事の進め方を否定し、どんどん保守的な考えに追い込まれ、その結果どんどん時代と逆方向にもがいてしまう悪循環に陥ってしまう、しかも唯一の拠り所だった給与=カネも減らされる。。。そうはなりたくないもんだ。

私がこの意見に共感しないのは、外部の人間がうちの会社へやってきて、事務作業を無料でやってくれるとは絶対に考えられないからです。

「イラストを描く」「コピーを書く」「ホームージを作る」といった作業を、依頼主の希望通りに期日を守って無料でやってのける人は少ないでしょう。デザイン会社が淘汰が進む今後、3流のデザイナーが技能の向上なしにデザイナーとして生き残る道はないかもしれません。しかし「イラストを描けてホームページも作れる派遣事務員」として仕事を獲得する道はあります。労働基準法が定める最低賃金+少々の待遇に甘んじるなら、一芸を持つ者が無能の人より先に失職する可能性は低い。

年収300万円で納得できるなら、お勉強のできる人は幸せになれます。ただしそれは勉強できない(しない)人から仕事を奪った結果です。でも自分ひとりの幸せを考えるなら、まずはそれでいい。私が書いているのは、そういう残酷な話です。だから梅田望夫さんが見ている、どこか遠い世界はてなブックマークで妙にヒットしたことには苦笑い。

「なんで昔はあんなに凄かったお前が、こんなにつぶしの利かない、組織の外では(実は組織の中でも)何の役にも立たない奴になっちゃったの? それは、この「20年間の過ごし方」が間違っていたからなんじゃないの。でもその「20年間の過ごし方」って、今でも「それでいい」って思っている人がけっこう多い生き方なんじゃないの」

この何の役にも立たないという言葉の使い方に私はひっかかるのです。例えば、この備忘録の読者なら時給900円のパソコン教室講師を務められる人は少なくないはず。スーパーのレジ打ちなど、その人の特性にあわせて適当な仕事を想像していただければよいのですが、梅田さんが考える「役に立つ」の外にある世界へ視線を向けるなら、「生きていくことはできる」のが勉強のできる人の実態です。

露悪的に書きますと、日本人の半分は大学に進学できません。それは多くの場合、金銭の問題ではなく能力の問題です。では日本人の半分が飢えて死ぬかといえば、さにあらず。勉強ができない人には体力に自信のない人も多い。だからいわゆる過酷な肉体労働ばかりでもない。では彼らが何をして生きているのかを考えてほしいわけですよ。

「大卒の俺様がそんな仕事をするなんて!」といったプライドと無縁の人が、勉強ができない人の職域に入り込めば、気楽に暮らしていけます。私は梅田さんを批判したいのではありません。梅田さんの文章は、ある種の層に向けて書かれた文章です。私が書いているような低いレベルまでフォローできないのは当然なんです。ただ、梅田さんの読者には「自分は梅田さんの文章の対象読者層なのかな?」と考えてほしいのです。

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