趣味Web 小説 2005-08-12

特殊法人改革の考え方

0.

特殊法人の民営化・解散について。雑多な記事群。政局メモ第7回。

1.

道路関係四公団は民営化が決まっています。

公団のままでは「もっと高速道路がほしい」という国民の声についつい応えてしまう、それで借金が膨らむ悪循環になっていた。だから民営化して、儲からない路線はもう作らないことにする。そうであれば、道路を車が通るだけでお金がチャリンと落ちていくので、これは儲かる。その儲けで約40兆円の借金を45年で返済していただく、そういう話になっています。

郵政民営化と同様、道路公団民営化も地方をガッカリさせる政策です。でもこれは正しい決断だったのではないでしょうか。

国鉄の分割民営化は、長年問題を先延ばしにした結果ついに1986年に経営が破綻したので断行された改革です。

国鉄の債務は37兆1000億円にも達する巨大なものであった。これを新鉄道会社等に健全経営を損なわない程度で、JR東日本、東海、西日本、貨物会社と新幹線保有機構に11兆6000億円を負担させるとともに、残る25兆5000億円については、国鉄清算事業団において処理することとした。なお、この国鉄清算事業団の債務については、鉄道事業に必要のない土地やJR会社の株式を処分して得られる収入などを充てることとされた。そして、なお残る債務については、最終的には国において処理することとされた。

その後の債務処理

旅客鉄道の本州3社と貨物会社は、実質的には国鉄改革時に新幹線保有機構が引き継いだものも含めて14兆5,000億円の債務を負担しており、現在も返済中である。

一方、国鉄清算事業団が引き継いだ残りの債務については、旧国鉄の土地や旅客会社の株式の売却により返済してきたが、地価高騰時の土地売却見合わせ、株式市況の低迷による上場の遅れ等により、土地・株式の売却が思いどおりにすすまなかったことから、従来の返済スキームが利払等により破綻した。1998年に国鉄清算事業団債務等処理法が成立し、新たな枠組みで債務の処理をすることとなり、現在は独立行政法人鉄道・運輸機構がその業務を承継している(国鉄清算事業団は1998年10月22日解散)。

他人事のような文章ですが、これは国土交通省の資料からの引用です。いまだに数十兆円の債務があり、これは税金で処理されます。こうなってはいけない、と思うのです。

2.

公団住宅を供給している都市再生機構という特殊法人があります。この会社は既にその役割を終えているので、存続ではなく解散が望ましい、という意見があります。ところが、バブルの後遺症でいまだに7300億円の繰越欠損金を抱えているのが難点です。事業計画では2018年に借金を完済することになっています。

ところがその2018年になると、「黒字でやっていて、国民のためにもなっている会社をなぜ解散する必要があるのか? 安価で高品質な住宅の供給は国民の生活を守るために云々」という批判が、やっぱり出てくるでしょう。道路公団民営化も揉めましたが、特殊法人の民営化や解散というのは、なかなか難しい。

3.

「国家の行政機構とは権力を背景に強制的に富を再分配して国民の幸福の総和を増していこうとする仕組み」と仮に定義しますと、行政サービスでは基本的に払った金額とサービスは不均衡になります。これに対し、民間企業は、金額に見合ったサービスを返す、といわれます。でも、そうかなあ、と思うんですよね。

24時間営業のコンビニエンスストア、じつは早朝の時間帯は赤字なんですよ。商品は売れないのにバイト代が高いから。けれども、早朝だけバカ高い料金には設定しません。逆に昼間の料金を大幅値下げもしない。規制なしでも、民間企業が生活のインフラを整備していくという状況があるのです(そこに需要があれば)。

何でもうまくいくとは限りませんが、「民間企業の活動=浅薄な利益追求」ではないと思う。

「黒字の特殊法人は民営化しないでいい」という意見をよく見かけますが、これには疑問があります。黒字か赤字かということは、実のところ、あまり重要ではないと思うのです。

ある特殊法人が結果的に黒字になっているとしても、それが特殊法人である以上、私利私欲を超えた「無理」を必ずしているはずなのです。逆にいって、そういったものが何もない(または昔はあったが今はもうない)なら、それはもう黒字でも赤字でも関係なく、解散するか民営化するのが筋でしょう。特殊法人である理由がないのだから。

これまで、大多数の国民はサービスの向上ばかりを要求してきました。その結果、財政危機となりました。だからこれからは、サービスを厳選する必要があるのです。

サービスを絞り込めば、現時点で黒字の特殊法人はすぐに民営化できます。そうなれば法人税も見込めますし、将来は株式公開というボーナスもあります。現時点で赤字の特殊法人も、サービスを絞り込むことで収支トントンを目指し、これ以上、借金が増えないようにしたい。

特殊法人改革とは、こういうことだと思うのです。最低限必要なサービスだけを残し、利益をどんどん出していただく。そのお金で国の借金をコツコツと返していく。

借金の返済よりも今日の飯、という意見はわからないではありません。けれども、莫大な借金を返さねばならない人が、「うな重を食べたい」とごねるのはわがままではないのか。そう思うのです。

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