徳保さんのエントリもbewaadさんに厳しい反論をくらってしまった。つまり、財政再建の方法は、「収入増・支出減」という方法じゃなくて、「名目GDP成長率>金利」状態に持っていかないと有効な策ができない。それをしない小泉総理の構造改革路線のほうが「戦犯」だと。
その厳しい反論というのが郵政民営化と解散を考える・その1:個別のご指摘を拝読してです。リフレ派として知られる bewaad さんが今回の郵政解散に厳しい意見を表明されていたので、いい機会だからこちらのレポートを提出した上でご意見うかがいたいな、と思いトラックバックしてみたんです。その結果、以下の回答を得ました。
財政赤字問題については以前詳しく書いたので概要のみ記しますが、巨額の財政赤字はそれだけ民間部門で使い切れない巨額の貯蓄超過があったことの裏返し(民間投資を賄ってなお余る貯蓄は政府か海外に貸すことになりますが、海外についても日本が世界最大の債権国であることからわかるように、目一杯貸し込んでいます)で、国民のわがままの結果ではありません。また、巨額の財政赤字といってもグロスではなくネットで見ればそれほど深刻な話ではありません(この点について、webmasterのレベルを超える議論としてBroda and Weinstein, 2004, "Happy News from the Dismal Science: Reassessing the Japanese Fiscal Policy and Sustainability"があります)。
さらに、財政赤字問題解消のための処方箋ですが、増税と政府支出削減だけでこれに対応しようとすればかえって悪化する可能性が高いといえます。当サイトではおなじみのドーマー条件ですが、要すれば増税をしなくても税収は最低でも名目GDP成長率に比例して増え、政府債務は金利に比例して増えますから、名目GDP成長率を金利よりも高水準で維持しなければ政府債務は発散します。近年の名目GDP成長率低下こそが歳入の著しい減少を通じて発散への道を着実に進ませているわけですから、まずはそこから手をつけるべきです。
#プライマリーバランスを喚いてうるさい財務省も、自ら公開しているプライマリーバランスの説明において、こっそり
近年では名目金利>名目GDP成長率となっており、プライマリーバランスが均衡しても、公債残高対GDP比は上昇していきますなんて書いています。わかっているならそれにどう対処するか少しは考えてほしいもので(笑)。増税や政府支出削減は名目GDP成長率が安定的にプラス(5%以上(実質GDP成長率2%台前半、インフレ率3%程度)を念頭においています)で推移するようになってからやればいいことです。それをデフレ=名目値が引き下げられる現在にやればますます名目値を下げるだけで、金利は絶対にマイナスにはならない以上(マイナス金利で貸すなら現金のまま寝かせておく方が得なので)、財政状況をますます悪化だけさせるでしょう。そして名目GDP成長率の引き上げには、郵政民営化は全く寄与する面が見当たらないのです。
ここまでは想定の範囲内。というのは、件の記事の補注2で、私は次の通り書いています。
増税+緊縮財政といったって、いきなり単年度で均衡予算を組むべきと主張したいわけではありません。10年ないしは20年で均衡させる、つまり財政が破綻する前に国債残高が上げ止まる見通しがほしいと思っているのです。増税を最低限とするために、年率数%の緩やかなインフレも実現に努力してほしいと思う。ただ、現状の税収不足は巨大過ぎます。増税が不要になるほどのインフレは、怖い。それは耐え難い苦痛になるのではないか。
このあたりは、感覚で書いています。緩やかなインフレで万事解決できるならよいのですが、増税も緊縮財政も、その幅はともかくとして、いずれも必要だと私は思うのです。
つまり、bewaad さんの主張されるリフレ政策だけで足りるの? という疑問があるのです。finalvent さんのご意見にも同じ感想を持ちました。大筋は、政府を小さくし、産業(民間部門)を興隆させ、そこから国家をまかなえるようにする、ということなんじゃないか。
と仰るのですが、現在の国民負担率を維持したまま税収が倍増するようには思えないのです。
というわけで、コメント欄で質問してみました。
(前略)「インフレ率3%を50年間継続で借金がGDP比30%以下に安定する」とかですね、そういった、素人にも判断しやすいモデルケースがあれば、ご教授いただきたいです。
国債残高は GDP 比40%以下とするべきと聞きます。ところが日本では2006年には180%に到達するという状況です。GDP 比なのだから、GDP の方が増えればいい。それはそうなんですけれども、どの程度のインフレならいいのか、そこが知りたいのです。
IT バブルがはじけて以降、ゼロ金利政策を通り越して量的緩和政策が導入されています。その後、銀行の不良債権処理が進み、貸し手側の問題は概ね解消されていますが、借り手が少ない状況が続いています。当面は国債をどんどん発行し日銀がそれを買う必要がある……というのが bewaad さんの主張です。つまり短期的には国債残高がもっと増えるわけです。昨今の政治状況を見るに、公共事業では国民の支持が得られません。手厚い社会保障施策を国債発行で賄うような形になる?(つまり最終的な「消費」の主体は国民)……そのあたりも含め、どのような政策が考えられるのか、ぜひご意見をうかがいたいです。
リフレ政策の簡単なまとめは拝見したのですが、具体的な勝算の見積もりが見当たらず、困りました。勝算の見積もりがないのは構造改革も同様ですが、「収支均衡を目指す」のは理屈としてわかりやすいと思うのです。一方、借金し続けて緩やかなインフレへ景気を誘導すれば OK というのは博打っぽい。不安なんですね。
日銀が長期国債を100兆円買い増すとインフレ率**%が**年間続き、GDP が**増えるので、結局、GDP 比では借金が減るので勝負に勝てる、さらに**%のインフレ誘導政策を**年続けていけば、国債残高は GDP 比で40%以下になる……そういったプランがほしいのです。「インフレいいよね」「でもお金かかるよね」「(財政規律が緩んで)借金が増えるだけにならない?」「そうかもね」では、ちょっと、という。
田中秀臣先生の書評:見失われた「第3の道」に感銘を受けたので、先生にも質問してみることにしました。リフレ政策の勝算について、ご教授いただけたら嬉しいです。素人は具体的な数字がないとピンとこないのです……。