政権公約の党内調整だけは余念がない民主党、今回も衆議院解散から1週間で独自改革案を発表するに至りました。じつは以前から同内容の主張は示していたのですが、党内調整が不調で先の国会には対案を提出できなかったんですね。多分、政権公約は概要を書くだけで足りるので、総論賛成各論反対の議員を取り込むことが可能なのでしょう。
ちなみに自民党の意思決定機関・総務会は全会一致制です。党議拘束の根拠となる総務会に反対者がいるのはおかしいという理屈。郵政民営化法案と人権擁護法案では多数決で党の方針が決まったので紛糾しましたが、じつは従来、話し合いが時間切れとなった場合には少数派が退席するのが原則なのです。そして細かい部分の調整が詰められなかった場合には「**さんに一任」という手法が使われてきたわけです。こうした知恵は、民主党にも継承されているはずなんですよね。
民主党が従来なかなか党内をまとめきれなかった理由のひとつは岡田代表の「話し合い絶対主義」でしょうが、それが致命的問題とは考えていません。自民党だって野党時代には必ずしも対案を出せませんでした。あの社会党でさえ、政権をとったら主体的な提案ができたのだから、私は楽観的に考えています。今回も政権公約までは決まったわけです。
私は民主党には投票しませんけど、民主党はおそらく今回の選挙に勝つと思います。勝ったら旧自由党系議員には頑張ってほしいと思う。
さて、民主党の郵政改革案ですが、その内容は「当面は現状の窓口ネットワークを維持しつつ郵貯の上限引き下げにより貯金を強制的に減らす」というもの。郵政公社は巨大なので、そのまま民営化すると民業が圧迫されます。窓口ネットワークの維持コストも膨大です。しかし政府案ではサービスの低下(とくに郵便局の大幅削減)を危惧した地方住民に配慮し、規模を維持して民営化します(民業圧迫は分社化で回避)。
民主党案では、まず郵貯が半分のサイズになります。郵政公社の収益の柱を最初に削り、強制的に民間銀行へお金を流してしまう。すると高コストな窓口ネットワークを維持したまま収入がどんどん減るので、大赤字になります。その赤字は税金で補填されることは岡田代表が13日の読売テレビ「ウェークアップ」(gori さん作成のテキスト版)で明言された通り。そんなアホな改革案があるか! と怒るのは考えが浅い。岡田さんが窓口ネットワークを維持するかどうかは国民が判断すべきと語っていることに注意すべきです。
民主党案が実現すると、数年で国民が悲鳴を上げます。こんな大赤字、税金で補填するのは耐えられない、と。そこで岡田さんは苦渋を顔に浮かべて「では国民の皆様、郵政公社を JR や道路公団のように民営化いたしましょうか?」と提案するわけですね。JR は赤字路線を切りまくったし、道路公団も国策の計画路線 2000km の内、採算の取れない 700km は建設しないと決めました。赤字を抱えて民営化される郵政会社は不採算局を全部閉鎖するでしょう。あははは。こりゃすごいや。
ようするに、国民はバカだから郵政公社全体が黒字の間は組織の効率化に賛成しない。だから赤字を作って意識変革を促し、身軽で強い会社を作るのです。さすが小沢一郎さんの改革案だと思うけど、途中でコケると赤字会社だけが残る最悪の事態に。ぶっ飛んだ提案だけに、そもそも国会の通過が危ぶまれます。