「わかりやすい説明」はたいていの場合、捨象が過ぎて重大な誤解を生むものですが、しばしば「それでも日常生活では困らない」ことが多い。何でもかんでも「より正しい説明」を希求していたら生きていくのもままならない(例えば食品の安全などブラックホールのようなもので……という比喩もまた誤解を招きかねないわけですけど)。それ故に「わかりやすい説明」は必要だし、一定の注意を払いつつ受け入れていく他ない。
そしてまた説明する側も、可能な限り正確で精細な解説を毎度ごり押ししてはいけない。時と場合と相手を考えて、説明の程度を適切に設定していく必要があります。
4つの本質的に異なる事象に注目すると、世界は4次元とみなせます。5つに注目すれば5次元。
例えば「小学生の有無」「曜日」「時間帯」「電車の混雑度」「私の憂鬱」の関係を考える5次元問題は、「小学生がいる平日の朝の混雑した電車はスゲー憂鬱」と解くことができます。簡単ですよね。人間は5次元の問題をサクサク解けるし、5次元の世界を想像することだって楽勝なのです。
難しく考えすぎている人が多い。基本的に私たちが生活している「空間」は3次元でおしまい。4次元とか5次元の「空間」は存在しない。ただし「時空間」は4次元で、「時空間と俺の体調」は5次元。それだけのこと……と説明すると、「簡単すぎて騙されたような気がする」といわれる。難しげな回答をして煙に巻く方が喜ばれる質問というのも珍しい。
あまりにも馬鹿馬鹿しい回答ばかり。
トラックバックにひとつ良解説があってよかった。「単位が同じで方向だけ異なる」という次元が3つも揃っている状況こそ特殊なのであって、ふつう、次元が異なれば単位も異なります。根本的に異なる単位同士は「変換」できない。感覚に訴える書き方をすれば、「たしかにサイコロは転がすことができる。だからといって時間を転がすことはできない。そもそも転がせるモノの方が例外でしょ」という話。
例えば、「身体を動かす」「おなかが空く」「仕事がはかどる」「前日の睡眠時間」これら4つの事象に注目すれば、これは4次元の問題となります。この4つの事象に「身体を動かすほどおなかが減り、仕事がはかどらなくなる。前日の睡眠時間が長いと、仕事がはかどりやすい」という関係があるとき、世界は以下のグラフで表現できます。
「空間」は3次元までしかないので、同時に表現できるのは3次元まで。今回は睡眠時間を除く3次元の関係を描きました。ただし代表的な2つの睡眠時間におけるグラフを並べて示したので、睡眠時間と他の3次元との関係もおおよそ理解できるかと思う。ちなみに通常は重要な2~3次元だけでグラフを描き、他は無視します。(注:「研究の結果、2つの次元の他は重要でないことがわかった」などと書き添えると親切)
グラフを持ち出さないほうがわかりやすいかな? たいていの問題はグラフを描かずに処理されるので、5次元の問題もすんなり説明できます。