東京農工大学の生協でひとことカードの返信を書いている「生協の白石さん」が話題になって数ヶ月。白石さんが返信を書いた一言カードを日々紹介するブログ「がんばれ、生協の白石さん!」も大人気となっています。このブログに目を付けた講談社が出版を決め、11月13日の発売が決まりました。
問題は、このブログの管理者が白石さんではないこと。テレビの取材もあったそうなので、白石さんはブログの存在をご存知でしょう。しかしだからといって、印税をブログの管理人が独占していいのかどうか。それに、一言カードは質問と回答からなっており、質問しているのは実名(ブログでは仮名に書き換えられている)または仮名の生協組合員(基本的に学生)です。白石さんの黙認だけでは片手落ちといえましょう。
とはいうものの。
注意すべきことは、のまタコの件でも書いた通り、著作権云々は問題の構成要素に過ぎず、より大きな「タダ乗りの是非」という枠組みで状況を捉えた方がよさそうだ、ということです。なぜなら、無料で公開されているブログについて、これまで著作権の観点から文句をいった人はひとりもいなかったからです。印税という形でお金が絡んできたとたんにブログ管理者を批判したり皮肉ったりする人がワッと現れる。著作権は批判の道具に過ぎない。
まあ、いわゆる「ブログの書籍化」なら、ブログの記事形態から考えて「引用」と強弁するのは難しい状況ですから、白石さんと出版社はコンタクトをとる必要がある。きっと何らかの合意があって出版が決まったんでしょうね。でも今後、2ch 本が紛糾したときのようにカードを出した学生たちの著作権が問題となりますと、話は難しくなります。粛々と出版されることを期待したいのですが、さてどうなりますことやら。
それにしても、ブログのコメント欄で文句を書いてる人の大半は白石さんでも東京農工大学の学生でもないことは容易に想像がつくわけで、ウェブで物言う人たちは「意識が高い」というか、「やっぱり他人事でもこだわるんだね」というか、「すごいな」と。この権利意識の強さ、どこで学んだのだろう。
本の著作権は全て農工大生協が所有するものであり、書籍化により私に一切の印税が入ってくるものではありません。そして、これらは全て企画段階から、白石さんを始め、農工大生協さんとの間で合意している事項であります。ただし、私がこの書籍化に全く関わっていないというわけではなく、編集協力という形で参加させていただいております。
……と、いうことだそうです。