趣味Web 小説 2006-04-02

冷たい人を憎むよりも

1.

rir6 さんがなぜブログをやめてしまったのか私は知らず、残念に思っていたのだけれど、こういうことだったのか……。澄良木修司さんのストーカーっぽい行動に参った、と。

rir6 さんは傍観者たちに対して怒っている。ここしばらく、そういった筋書きの小説やドラマ、よく見かけるような気がする。いじめの実行者よりも傍観者に恨みを抱くという。ふつうの復讐劇に読者や視聴者が飽きているとか、大量殺人の動機付けに都合がいいから、といった視点から重宝されてるのかな。

私は rir6 さんの怒りはわかるけれど、その倫理基準には賛同できないな。だって、厳し過ぎるもの。例えばホームレスが近所の公園にいるとする。ある冬の朝、彼は凍死していました。さて、彼を助けなかった私は殺人者なのでしょうか? まあ、広義の殺人者ではあるのだろうね。多少は申し訳なく思う。けれども、死者の遺族が現れて、「放置の責任を取って賠償せよ」とか要求してきたら「勘弁してよ」と思うでしょう。

私は rir6 さんと澄良木さんのトラブルを知りませんでしたが、まあ、知ってても静観していたでしょうね。rir6 さんが「やめてください!」といっているのを見てさえ、何もしない。「徳保さんからも一言いってやってくださいよ」と頼まれたら、ようやく重い腰を上げる……と思うけど、保証はできません。冷たい話ですが、rir6 さんよりもっと不幸な人は世の中にいくらでもいて、私は彼らを見捨てて生きている。

rir6 さんを助けないことが罪ならば、私の人生なんて、とっくに罪の底なし沼に落ちているといっていい。私は気まぐれで、助けたいときだけ人を助ける。これが精一杯だ、とはいわないが。→ウッシュリスト(2006-03-17)

もしまた将来に於いてこの様な状況(つまり、あるブロガーに対し変質者が犯罪行為を行い、それをウェブ上に公開しているというような状況)が現れた時は、今度はきちんと言論人としてそのような変質者を批判して欲しいし、明白な犯罪行為でなくても、犯罪行為につながるような異常な行動であったら、それをブログなどで取り上げる時は一定の留保をして欲しいと、それだけを僕はid:kanose氏にお願いしたいのです。

と、rir6 さんはおっしゃる。無理だね、少なくとも私には無理。よく知らない人が死んでも死んでも死んでも、何の声も上げないような人間だもの。そんな私も、ほしい助けが得られなかったときには、冷たい人々を恨んで憎んで呪うに違いない。けれども、時が激発した感情を洗い流したなら、冷たい人を憎むよりも、温かい人に感謝する気持ちを思い出したい。

いつぞやに助けてくれた fhvbwx さんには恩義を感じています。

2.

私も「住所を公開してもいいかな」と少し思っているので、そのあたり少しだけ……。

現在私は電話番号を公開していますが、いたずら電話はほしくない。これは、それなりに発言に責任を取るつもりはある、という意思表示なのです。

住所と電話番号がセットになると、いたずらのバリエーションも増えます。しかし個人レベルで住所と電話番号を公開している人は、じつはたくさんいます。個人運営のネットショップや、フリーのデザイナーの多くは、自宅が仕事場と一緒になっていて、当たり前のように住所も電話番号も公開されています。彼らがみないたずらや嫌がらせに悩んでいる、という話は聞きません。連絡先の公開が即ち致命的だとはいえない。

じつは私が某ウェブサービスをやめたのは、要求を示さず嫌がらせの予告が行われたからでした。私はそのサービスにおいて本名も勤務先も自己紹介に記載していました。そこに目をつけた某氏は、私が数回「**という属性を明かせる方のみ、ご意見ください」と書いていたのをとらえて、私の勤務先に「御社では社員に個人情報を集めさせていますが、何に利用しているのですか?」といった質問をする、という。これには参った。

べつに悪いことはしていないのだけれど、申し開きができればいいという問題じゃない。趣味領域のトラブルを仕事場に持ち込むこと自体が問題なのは、気弱な会社員の人ならお分かりいただけると思う。

相手は私を侮蔑する言葉などを日記に書くのみ。要求が皆目わからないので、私は困りました。悩んだ挙句、「目障りだから消えろ」ということか? と思ってサービスを退会したら、「これで許してやる」みたいな日記を相手の方がお書きになったので、ホッとしました。触らぬ神に祟りなし。この日記の読者様におかれましては、「あーそういうことがあったのね」とだけ思ってください。こういうこともあるんだなあ、と私は実感したわけです。

ではなぜ、いま住所の公開を即座に却下しないのか。やはりそれは、世の中たいていのものごとは、利益と経費のバランスの問題だと思っているからです。最近、クラスの緊急連絡網に電話番号を載せることさえ嫌がる人がいるのだそうですが、「台風で学校はお休みです」という電話がかかってこない不便に耐えてまで、広告電話を掛けてくる業者に電話番号が渡る危険を避けたいと思う心理は、私には共感し難い。BSE でみんな大騒ぎしているのだけれど、自動車には平気で乗っている……。

仮に将来、私が住所を公開しても、私は来客を望まない。電話番号を公開しても、常に留守電にしているのと同様です。徳保隆夫は連絡先の割とハッキリした人間だ、というアピールをしたいだけです。僅かな利益と、僅かなリスクのバランスをどう考えるか。ま、大半の日本人は匿名を貫くのでしょう。その一方で、年間の売上が数万円にしかならないネットショップでも法の規制があるのでみんな住所と電話番号を公開している。「住所を公開するなんて信じられない!」という人も、そうした現実を知った方がいい、とは思う。

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