趣味Web 小説 2006-04-13

ISED倫理研最終回の議事録を読む

倫理研での白田秀彰さんの発言はいつも冴えていて、卑近なレベルで膠着した議論を、うまいこと抽象度を上げて混ぜっ返す。ところが今回の白田発言は、意想外に素朴な言葉で語られる「わかりやすい」内容。拍子抜けしたものの、よくよく読み込めば、そしてその先の展開を見るに、「さすが白田さん」との認識を新たにしました。

白田さんのコメントは三つに分かれていました。第一に、匿名とは言論を内容だけで判断することである。それは近代の討議空間がもともと理想としていたものだ。しかし実際には、商業的な言論市場はその理想を実現していない。そこで理性的な討議空間を再構築するためにこそ、匿名のネットワークはつくられてきた。そう考えることができる以上、コメントスクラムが多いから匿名を排除するというのは考え違いではないか。これが第一点ですね。

第二点に、仮に言論が自由市場だとすれば、コメントスクラムは数の上で注目を集めている以上、言論の質が高いことを証明している。というよりも、そもそもこうしたプロセスがない限り、なにをもってして質の高低を判断するのかがわからない。言論の質は事後的にしか測定できない。そうである以上、コメントスクラムを事前に抑制するようなシステムを構築していいのか。それはむしろ市場の機能を喪失させてしまうのではないか。これが第二点目ですね。

そして最後に、粘着さんが問題だというが、その粘着さんは命をかけているのかもしれないし、その人なりの表現方法なのかもしれない。粘着だからといって切り捨ててしまえば、はたして言論の公正さは保てるだろうか。これが三点目ですね。

これは白田さんのコメントを受けた東浩紀さんのまとめですが、東さんの司会はいつもながらお見事。

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