趣味Web 小説 2006-04-24

フィーリングで語る人々

1.

「わざわざ自分のWebサイトまで閲覧しにきてほしい」という感覚が本能的にあるのは理解できる。また「カウンターが回らない」という理由を上げる人も居るだろう。

しかし本当に重要なのは「自分のエントリーを記憶に留めてくれる事」だ。

これは相当に感覚的な主張だと思った。何が重要かなんて、客観的に決められるものか。にもかかわらず、対立する意見は本能に従った感覚であり、自説は合理的としている。けれども、その合理性は otsune さんが主観に基づいて設定したルールの中での合理性に過ぎない。

「自分の記事をわざわざサイトまで読みにきてくれる人がたくさんいること」こそが重要なのであって、「記事が単に大勢に読まれること」なんてのは無意味だ、少なくとも自分にとってはどうでもいいよ、という主張は十分にありうる。記事だけじゃなくてサイト全体のデザインを見てほしいといった意見はよく聞く。文章や、せいぜい文字装飾だけ伝わればいい、という人ばかりではない。

それに、RSS リーダーの利用率はまだ低い。現に RSS など出さなくとも巨大なアクセスを誇るサイトは無数にあって、「私」が「こんなサイトは読まない!」と思う感情を一般化することは難しい。その程度のことなのだから、脅迫めいた言辞を使うのは(あえていうなら)詐欺的だと思う。

モヒカン宣言などを読む限り、そもそもモヒカン族(またはその類縁)とは、一定の倫理規範を守る(そしてある種の倫理規範を無視する)集団なのであって、彼らが「感覚的な主張」と無縁なわけではない。

実際、モヒカン宣言のルールを全部守っても、「RSS に全文を入れない」という主張を導くことは十分に可能。にもかかわらず、そのような自称/他称モヒカン族がいないのは面白い。このあたりに、otsune さんの主張もまた感覚に基づくものに過ぎないことに気づかない読者が多い秘密があるように思った。

2.

これも不思議な主張。伝統回帰色のある教育基本法改正に反対するのは民主主義社会の一員として当然なのに、なぜみなそう思わないのか? というのだ。これは id:t_kei さんの常識が「常識」でないからなのだけれど、そんなこと、いわれなくても気付きそうなもの。

社会の分断を訴えている割に、例えば多くの国民が多党制より二大政党を志向していることなどについては、考慮の外となっている。そして現代の日本社会においては、他者の生活空間を侵犯しないことこそが、マジョリティの属性なら、なぜ下世話な教育基本法改正が行われようとしているのか。全編こんな調子なので、筆者が多様な価値観の存在を、いいと思っているのか、悪いと思っているのかよくわからない。

断:怒りを忘れた日本の学生たち(2006-04-22)という新聞記事がある。

フランスでは「若者雇用制度」が学生たちの大規模な反対運動で廃止になった。運動が燃え上がるや、一九六八年の学生運動の連想から、フランスの学生は大したもんだが、日本の学生は怒りを忘れている、という単細胞反体制主義者の声が聞こえるようになった。

若者雇用制度が若者に不利か有利かは単純には言えない。日本でも女子深夜勤務禁止の廃止が女子労働者の就労機会を増やし労働環境を改善したのだ。もっとも、長い目で見て、これが良いことかどうかは分からないが。

思考停止の単細胞反体制主義者には困ったものである。と思っているところへ、インドネシアでも若者たちが怒りを表明して過激な該当行動を展開し始めたというニュースが報じられた。男性誌「プレイボーイ」のインドネシア語版の創刊に怒ったイスラム過激派の青年たちが、十二日、出版社の社屋前で抗議集会を開き、投石などで警官隊との衝突も起きている。

日本の出版社はインドネシア語版「プレイボーイ」(セミヌード止まり)の十倍はイヤラシイ雑誌を出しているのに、日本の学生たちはなぜ怒りの抗議デモをしないのだろうか―。という怒りを、単細胞反体制主義者はなぜ表明しないのだろうか。

そういえば一九九〇年九月にはインドで大規模な反政府運動が起き、抗議の焼身自殺者まで出た。運動の要求は「差別廃止反対」であった。命がけで差別を要求する学生たちの怒りに連帯しようという声は、日本ではなぜか上がらなかった。

日本の学生たちが怒りを忘れていることはホントに悪いことなんでしょうか、反体制主義者様。(評論家・呉智英)

呉さんの物言いは皮肉が過ぎると思うけれど、どうも id:t_kei さんは、単に伝統回帰が嫌なだけなのではないかと。現行の教育基本法も、読んでみると相当に恣意的な価値観の押し付けがある。まあ「恣意的」かどうかの判断自体が主観的なのだが。

3.

「私は**が正しいと考える」と主張するのはいい。しかしその主張に客観性がないことを自ら認識することは、なかなか難しいな、と。ついつい、ここまでは「常識」でしょ、とやってしまう。ある程度、そういっていかないと話が進まないのではあるが。

Information

注意書き