書く際に気をつけたのは、俺が普段書いている感じをできるだけ削ることです。otsuneさんに代表されるモヒカンの人たちや、徳保さんの書き方を参考にしたのですが、書いている内に俺自身が持っている天然の煽り体質がどんどん出てきてしまって、最後の方は冷静さを失い、かなり津田大介をDISる内容になってしまいました。その点はちょっと反省しています。
……。
別にレコード会社がこの世からなくなろうが、それに代わる何かが現れて、クリエイターとユーザーに今以上の利益がもたらされるなら、僕ら(僕らの時代らしいので例によって僕らっていいます)ユーザーには何の問題もない。レコード会社が本当に生き残りたいなら、ユーザーとクリエイターの利益を考えてバランスを取るしかないのに、そういう気配がほとんど見えない。だったらもういっそ潰れてくださいと。
将来のことはわからないけれど、現在の私には、以前と異なり、アニさんの主張に反論したいという意欲があまりない。消費者の大好きな価格破壊が何を引き起こすか、どうぞ好きなだけ実験してください、と投げやりな気分。
成熟商品の価格破壊は市場を縮小する(参考)。半額セールだからといって2倍買うわけではない。ここ数年で、韓国の音楽業界は市場規模が4分の1になってしまったという。
書籍の価格(2006-04-18)に書いたとおり、価格破壊は従来型の勝ち組を絞り込むことになる。思えば、レコードとラジオこそ音楽史上最大の価格破壊だった。音楽の主用途だった BGM は一流のプロフェッショナルの音を再生する仕組みに席巻され、生演奏は庶民の生活から消えました。音楽で生きることが難しくなったのは、そう古い話ではない。一流の音楽を安価に享受できる世界は素晴らしい。しかしその代償は、決して小さくはなかった。
新著をハードカバーと新書と文庫の3形態で同時発売すればいいじゃないか、と森博嗣さんは仰った。作品や読者のメリット
を考えよ、とも。売れっ子作家らしい発言。音楽家にとって、本当に現在のレコード会社が単なる中間搾取者ならば、さっさと飛び出すだろう。著名な漫画家や編集者がコアミックスを設立したように。著名な芸能人が独立して事務所を構えるように。ベテラン医師が総合病院を出て開業医となるように。……こうした事例をみれば、本当に「搾取」されているのは一部の勝ち組だけとわかる。
けれど私も、スーパーの出店を歓迎してシャッター通りとなった旧来の商店街を忘れ、安価な輸入食品に感激して食物自給率の低下を招いた一人。
最も文化の発展に寄与する
のは、どのような選択なのか。消費者の権利を拡大していくと、(プロ)クリエーターの淘汰が進みます。それでも1億人が低コストで音楽に満ち溢れた生活を送れるなら、その方が大切なのか? レコード業界を不用意に破壊した先に、私は明るい展望を描けないが……。
そして、言葉は返ってくる。
Winny の挑戦は夢破れました。そして大勢が悲しみました。では Naver と Yahoo! の挑戦はいかに? 今、著作権の侵害を不安視するあまり、スクラップ機能や転載機能そのものを殺そうとする人が多い。P2P 自体は素晴らしい技術だといい、「不安」だけで未来を潰そうとする勢力を批判していたのは誰なのか? 私はここで、「どーだ、
福祉の喫茶店からも著作権料を徴収する JASRAC の気持ちがわかったろう」とはいいたくありません。
個人的には、とりあえず最初から無料の領域でこそ著作権の縛りをユルユルにして、本当にそれで文化が発展するのかどうか実験するべきだと思っている。ところが現状は逆なわけだ。他人の飯種を奪ってまで、危うい挑戦を押し付けようとしている。消費者なんてそんなものだといってもいいけれど、あんまりなんじゃないのかね。
この部分は毎回徳保さんと対立する部分なのだけど、俺は決してユルユルは望んでませんよ。靴にしてもPCゲーにしてもクリエイターに最も利益の大きい購入方法を取るという実践をしてる。自分は卸業者なのに 笑
アニメのこと(2004-01-19)や任天堂次世代機 コードネーム『Revolution』(2005-05-18)などで(適切な)対価を払いたい
と繰り返し表明されていることは承知してます。その一方で、アニさんが適切と考える範囲・手法で画像や映像などを利用しても法に触れてしまうケースがあるが、大切なのは世界を豊かにすることだ、とも主張されていますよね。私のいうユルユルは、著作権のこと(2004-11-19)で穴がありまくり
とアニさんが書いたニュアンスに近いと思う。