既に一般紙、スポーツ紙、夕刊紙、経済紙とラインナップを取り揃えている産経新聞社が、今日新たな一般紙を創刊しました。SANKEI EXPRESS 略して EX と称するのだそう。
なぜ紙媒体? と疑問の声も出ていますが、テキストを検索できないなど不便はあっても、紙媒体には電子媒体にない読みやすさ、場所を選ばない手軽さ、物理的な保存の堅牢さがあり、何より商売が成立する人数の消費者が価値を見出しお金を出してくれるのがいい。書籍が刊行され続ける理由と同じ。
既存の一般紙である産経新聞本紙とEXの違いは編集方針。詳細はリンク先に譲りますが、実際に手にしてみた印象を書けば、掲載記事は本紙とほぼ重なりますが、パッケージを変えるだけでこうも印象が変わるか、といった感じ。
能書きは公式サイトにありますので、以下は私の感想をつらつらと。
タブロイド版で手が汚れない印刷の一般紙というスタイルは、以前から私が待ち望んでいたもの。紙も白くなって写真が美しく映え、横組みのレイアウトもすっきりして見やすい。
全32ページ、8枚の紙からなり、外側4枚がニュース、内側4枚が生活・文化情報とキッチリ区分されている。そして内側の方にテレビ欄が配置されているのが素晴らしいアイデア。「お父さん、テレビ欄は置いてってよ」「でも1面の記事は読みたいんだけどな……」というわけで、宅配の新聞を取っているにもかかわらず駅売りを買っていた人(私の父みたいな人)には朗報でしょう。
産経本紙とページ数が同じで紙面サイズが半分ですから、掲載情報量は大胆に絞り込まれています。その結果、EXは非常に特異な新聞になっています。
EXでは1~5面までをTOP5面とし、1頁につき1つの話題のみを取り上げます。通常のニュース記事、解説記事、用語解説、写真がワンセット。ニュース記事だけならテレビニュースと同等ながら、解説記事と用語解説で一歩上を狙う。従来、その日の状況によって柔軟に構成やレイアウトを組み替えてきた新聞編集の常識を捨て、練り込まれたシステムを堅持した紙面構成で、初心者に優しい新聞を作ろうとしているわけです。
大きなニュースを数を絞って紹介し、その他の主要なニュースは30・31面にまとめて掲載、残る紙面は「柔らかいニュース」を中心に、毎日所定のページにほぼ同じ大きさの枠・記事数を確保していく。テレビニュースの内容を膨らませて、上品な雑誌にするとEXになる、そんな印象です。
全32ページのうち16ページがカラー紙面というのも頑張っていると思う。写真のないページが1頁だけ(テレビ欄の右半面)なのも特徴かな。
これまで新聞を読んでいなかった人に購読してほしいというEXですが、無事に離陸するでしょうか。
楽観はできませんが、例えば小学生~高校生の教育用途にお勧めです。主張(社説)も産経抄も正論も意図的に掲載されず、ニュートラルな紙面となっており、NIE(Newspaper in Education)に適しています。
ちょっとマジメな大学生が一紙だけ購読したい場合にもお勧め。従来の新聞は情報量も物理的な分量も、一般人にはオーバースペックだったと思う。EXは部数が少ないから折込チラシも劇的に少なく、紙ゴミが溜まりません。また白い紙ながら新聞紙ではあるので、鍋敷きなどの用途にはちゃんと使えますよ。
とまあそんなわけで、EXを一言で表現すれば、きれいでコンパクトな新聞です。テレビニュースでは物足りず、従来の新聞は無駄が多い、とお考えの方なら検討の価値あり。逆にいって、テレビニュースや無料のウェブ版で満足している人にはアピール困難でしょうね。
月額1680円と従来の一般紙の半額近い破格の値段設定なのですが、産経本紙からの乗り換え需要がメインではマズイ。EXが新聞無読層の需要喚起に成功することを私は期待してます。こういう面白い媒体には、ぜひ継続してほしい。以上、応援記事でした。
以下、余談。
原口和久さん(「成田あの一年」は空港問題に関心のある方必読)の冠コーナーが予想以上に大きなスペースをもらっていて、目を引きました。ブログを読んでいるので親近感がわき、大きな扱いが嬉しい。あと私は参加してないけど片岡友里さんと高橋裕子さんのオフ会の記事が顔写真入りで載っていて大笑い。