趣味Web 小説 2007-04-16

すぐ忘れる

このエッセイがありがたいのは、私にも何の話だかわかるように書かれていること。私は人名を覚えるのが苦手なので、マイナーな登場人物の名前をひょいひょい並べられても困ってしまう。

ところで、「我が意を得たり!」と感激するような文章が世の中にはたくさんあるけれども、それを読んだ直後でさえ、自分には同じような文章を書くことはできない(ことが多い)。その理由はいろいろあるのだろうけれども、割と大きな部分を占めているのが記憶の曖昧さ。

いわれてみれば「そうそう、それだよ」と思うのに、自分一人ではちっとも思い出せない。「写真のような絵」というのは、その道では誉め言葉にならない一方で、庶民の間で「絵がうまい」といわれるのは、以下に写実的に描けるかという技術だったりする。「単なる知識」というけれど、バカにしたものではない。

「頭がいい」というのは、かなりの部分、記憶力だったりするように思う。「知ってるだけじゃダメ」とはよくいわれることですが、知っていたのに、きちんとできなかった理由を突き詰めていくと、「聞いたことがある」程度の「知っている」だったことが問題の根源だった、というケースが多い。

口頭試問でサラサラと説明を口にできるレベルではなかった、と。あるいは「……と思います」をつけずにはいられないレベル、とかね。

しろはた三国志の「劉備は孫権配下の一勢力だった」説、私もかねがねそうではないかと思っていたことなんです。でも他人に一度も話したことはない。先に述べたとおり、私はどうにも記憶の方が弱くて、調べなきゃ何も書けない。張飛の字(あざな)さえ思い出せない体たらく。これでは小話程度でも厳しい。

これからは知識ではなく思考力の時代だ、なんていう人が多いですけど、何でもかんでもウェブや本で調べないと言葉が出てこないような人は、使えないと思う。かくいう私も、会社でつくづく実感しています。報告書に自分が書いた数字を、3時間後に訊ねられて回答不能。「すみません、資料を確認します」何たる無能!

指示された仕事を作業ノートから鞄の中の手帳に書き写したのに、その手帳を見ることを忘れてしまう。製品の耐久試験のために試験場へ行ったが、当の製品を会社に忘れた。どうしてこうしたミスができるのか。あとお世話になってる同僚たちの名前が、ほとんど名字しか思い出せない。意気消沈。

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