趣味Web 小説 2007-07-12

学生に考えさせる授業・2

学生に考えさせる授業(2007-07-03)の続き。

uumin3さん、どうも。自分も言葉足らずがありまして、仮説Cは、事前に決まっていないというか、まさにD,E,F,G…とどんどん学生に出しちゃってもらいたい、その「事前に想定しうる落しどころ」からどのくらい外れるか、というところを評価したいのですね。正解を事前には決めているわけではなくって、まさに「おお、そこまでは僕も考えつかなかった、思い至らなかった要因だなあ。よく気がついたなあ。」という風に相手を褒めたいし、それはまさに僕の意図どおりなんです。

講義録第一回の、「なぜ行列の出来るメンチカツ屋は値上げしないか?」をご参照下さい。ブログで紹介はしていませんが、後になって学生からもいろいろユニークな仮説が出てくるようになってきました。

いやいや、事前に正解が仮定されていてもいなくても、それは関係ないのです。私の場合は、言葉足らずの逆で、余計なことを書いたので誤解されてしまったようです。

先生の想定外の回答 D,E,F,G を、予め(テレビや本などを通して)知っている学生がいた……と仮定してください。この学生が、「たったいま思いつきました」という演技をしながら発言するとき、福耳さんはこれを看破できますか。私は新聞や本をよく読む学生だったので、このやり方で多くの先生に褒められてきました。

だからつくづく思うのです。考えることが大切だ、とよくいわれますが、人類が全く初めて経験するような問題なんて、そうそうありません。個別の事情はあるものの、枠組みとしては過去に自分よりずっと優秀な人が取り組んだ問題の応用例に過ぎない。自分で「考える」必要なんてないのでは? と。

なぜ行列の出来るメンチカツ屋は値上げしないか?」をいきなり本で調べようとしたって、それは無理というもの。しかし「だから考える力が必要なんだ」みたいな短絡をする人がいるとすれば、それはおかしい。

一生懸命考えれば、1割くらいの学生はユニークな仮説をいくつか思いつくかもしれない。けれども福耳さんが紹介した無知仮説、高-価格弾力性仮説、信条仮説、体験商品仮説、行列シグナル仮説、素材歩留まり維持仮説という6仮説を全て自力で発見できる学生はほとんどいないはずです。

ところが「考えなさい」といわれて沈黙し目を伏せた学生たちも、福耳さんの講義の後なら、「行列のできるラーメン店が値上げをしないのはなぜか?」という試験で60点は取れる。これが知識の凄まじさです。

ラーメンに高-価格弾力性仮説はあまり該当しそうにないし、素材の歩留まりもネックになりそうなものが思い浮かばない(注:メンチ仮説の例題では肉屋が1頭単位で肉を仕入れている前提で歩留まり仮説を構築していた)。だから脊髄反射で6つの仮説を並べたって優は取れない。

訓練が必要であり、また訓練が可能となるのは、この領域ではないか。オリジナルの仮説を立てるのは、非常に難しく、多数派の「お客さん」化は避けがたい。けれども、よくある仮説のパターンを示した上で、練習問題に取り組ませるのは有意義だし、みな諦めずに取り組めるテーマでしょう。

補記

講義録を読む限り、福耳さんの授業は、基本的にそういう方向性で組み立てられていると思います。

できることなら、「余談の多い経営学」「経営学実習」みたいな2コマ連続の枠を作りたいところです。

教える側があからさまにツッコマレヤスイ物言いをして、学生が「いや、それは筋が通らないでしょう!」じゃあ、どうすれば筋が通るんだ?「それはかくかくしかじか。」みたいなところへ誘導したいのですが、難しいですが、頑張りたい。まるっきり絶望的でもないみたいに思います。

これは難しいと思います。私の前回の記事では、(大半の)学生の「お客さん」化を指摘しましたが、やはり同じなんですよ。

「いや、それは筋が通らないでしょう!」を学生と先生の生のオーラルコミュニケーションによって実現するのだとすれば、100人学生がいても、高々4~5人だけが授業に参加するのが精々です。ほとんどの学生は先生の発言のおかしさなんか気にも留めないか、不思議に感じても、その指摘は他人に任せます。

指名でもされない限り、他人に向かってもやもやとした違和感を具体化するような、面倒な作業はしません。

だから、やるなら実習形式か、試験の形で行うべきです。……というのが、補習塾で教えていた私のような人間の発想ですね。そういうのはエリート教育の場である大学にはそぐわないのかもしれませんが。

授業案

どうしても学生にオリジナルの仮説を書かせてみたいんだ、という場合、私ならこうするという授業案をひとつ。小中学校を想定しています。

ラーメンを例題とし、メンチカツを練習問題にします。ラーメンの例題では教師が、無知仮説、信条仮説、体験商品仮説の3つを示す。練習問題では、3つの仮説の他に1つ以上、オリジナルの仮説を示しなさい、と指示。無知仮説のように素朴な意見でいいんだよ、と言い添えます。

行列シグナル仮説は、生徒にも思いつきやすそうなので、ボーナスとして温存(「行列ができる店としてテレビで紹介されたりするから!」みたいな意見もシグナル仮説の亜流ですよね)。高-価格弾力性仮説と素材の歩留まり仮説は隠し玉。小中学生にはちょっと難しいので、時間が余ったら片方だけ説明する算段。

これだけの準備をした上で、想定外の仮説がどれだけ出てくるかを楽しみに待つ。ただ、やっぱり一番気にかけるべきは、多数派の生徒がちゃんとオリジナルの第4の仮説を書けるかどうか。そのほとんどが行列シグナル仮説だとしても、とにかくオリジナルを書けたなら「よく頑張ったね」とほめたい。

この授業案のポイントは何かというと、0から4を出すのは難しいが、3から4を出すのは、もう少し簡単だということです。3つの仮説を学習する。3つの仮説を復習する。さあ4つ目の仮説を思いつくかな? そういう仕掛けですね。

あと、クラス最下位の子も、3つの仮説を勉強できたならOKと考えること。4つで100点なので、復習の3仮説が理解できていれば75点。60点を超えるので合格点です。ちなみに5つ以上書いても最高点は100点で、125点とかにはしません。

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