ただまあ、証券を他の金融商品よりも優遇する必要があるのか、というところ。(追記:森信茂樹さんの解説を参照のこと)
ところでこの問題、フラットタックスへの不満、という切り口もありそう。国民の本当の不満、国民がイメージしている「優遇」とは、暫定的な税率引き下げだけでなく、所得税+住民税より低いという税率の絶対値、そして累進税ではないというその仕組みまでを射程としているのではないか。
所得税の累進課税を「正しい」と思う人は多いわけですが、「リスクを取って才覚を発揮して得た収入であろうとも、絶対額でたくさん儲けた人には、大きな喜捨の義務がある」と考える人々にとって、現行の証券税制は不愉快でしょうね。
法人税でも「大企業からもっと取れ」と、利益率ではなく絶対額で利益の大きな企業に高い税率を課すべき、という意見はけっこう聞きます。大金持ちは株で何億円も儲かっていながら税率10%なんておかしいじゃないか、という庶民感情、そう簡単に阻却できるものだろうか。
私は法人税などを累進税にすべきとはいわないし、そうすべきとも思わない。ただ、私は必ずしも、前記のような庶民感情を資本主義の邪魔とは考えていない。意外とこれはこれでいいバランスなんじゃないか。
金融資本の海外逃避が怖いといっても、許容範囲内の政治的コストかもしれない。個人所得税の最高税率を下げて、日本から逃げ出す金持ちがどれだけ減ったのか。別に税率が高くても、それを原因とする危機など起こりはしなかったのでは?
私は素人流に思い付きを書くだけなんだけど、法人税率を旧水準に戻し、所得税の最高税率も元通りにしていいのではないか。ごく一部の企業や人が消えるにせよ、どうせ第三次産業が日本経済の主力。移動できない企業や人が大半でしょう。どうしても増税が必要だとして、消費税を上げるよりは副作用が少ないと思う。
※消費税増税が経済成長の足を引っ張ることを示した実証的研究の成果はいくつも目にしてきたけど、所得税の累進緩和や法人税減税が経済成長に資するという主張については、(不勉強な私は今のところ)情緒的な説明しか見たことがない。
私はずーっと社会科が大の得意で、工学部に進んだくせにセンター試験で最高得点率になった科目は政経。教養科目でも社会科系は軒並み優を取った。で、ほんの数年前までバリバリの財政再建論者だった。消費税は欧州並みにすべき、と素朴に思ってた。
それをバカにできるほど、今の私が何を知っているわけでもない。1年後、元の鞘に納まっているかもしれない。でも、少なくとも今、私は日本の政治が庶民感情と綱引きしてきた歴史に、感謝してる。
ムカつきを言葉にして、「あんたら、自分の首を絞めるようなことばっかりいって、バカじゃないか」というのは、大切なことだと思う。でも最近は、逆にそういう人を見たときに、「まあまあまあ」といいたくなる自分がいる。これもまた、多少の意味があることかもしれないと思う。