趣味Web 小説 2008-01-16

努力の見返り

父は株価の上昇局面でさえ大赤字だったので、最近の状況は、もう目も当てられない。しばらく前に母が資金供給をストップしたので、リスクは限定的なのだけれども。

とはいえ、年金2年分を投入するのに、ろくに勉強をする気もなかったのは、私には理解し難い。本人いわく「俺はずーっと経済に関心を持って情報を集め、株式投資のシミュレーションをやってきたんだ」とのこと。その自信がどこから湧いて出てくるのか。

それでも父は、証券会社のセミナーには行った。講師の先生は短期投資を勧めたという。笑ってしまった。そりゃ証券会社主催のセミナーだもの、短期投資で何回も何回も売買してほしいに決まっている。父は毎週のように証券会社に電話をかけて、どんどん手数料を取られた。セミナーが無料である理由。

母は「ほんとバカなんだから」といってネット証券の口座を開設し、父はようやく悪徳(?)証券と縁が切れた。その後、母は、月1万円ずつインデックス型の投資信託を開始。今はさすがに赤字だけど、しばらくは黒字を維持していた。そして例によって例のごとく「あなたはダメねぇ」と。

あまりに楽しそうなので、損をするとわかりきっていて父の株趣味を止めなかった理由はこれか、と私は思った。

毎日真剣に新聞とにらめっこして、独自のデータ分析をして頑張っている父の努力って、一体何なのか。他人は関係ない、自分の信じる道を進むのだ。やらずに後悔するより、やって後悔する方がいい。努力は裏切らない。成功者は、そういうけれども。

母は、私の貸した本を3時間かけて読み、その日の内に自動積み立ての手続きを完了(父の口座を作ったときに自分の口座も用意していた)。それっきり、何もしていない。株価が下がっても、「安く買えるのはいいこと」と動じない。それで父よりうまくいく。

話の方向性は違うけど、通じているところがあると思う。

夢を諦めたら人生はおしまい、みたいな意見がたくさん出ていて、反論する人がいない。そういう人は、たとえば植物状態になってしまった人の生は無意味と思うのだろう。惚けが進んで家族のこともよくわからなくなってしまったら人生オシマイだ、というのだろう。私とは、相容れない立場だ。

まあいい、そういう人は、生涯、夢を持って頑張り続ければいいさ。その邪魔はしない。

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